August 11, 2005 Vol. 353 No. 6
アリゾナにおける想定外のマダニ媒介性ロッキー山紅斑熱
Rocky Mountain Spotted Fever from an Unexpected Tick Vector in Arizona
L.J. Demma and Others
ロッキー山紅斑熱は,斑点熱リケッチア(Rickettsia rickettsii)によって引き起される,生命を脅かすダニ媒介性疾患である.この疾患はアリゾナ州ではほとんど報告されておらず,その主たる媒介動物であるカクマダニ属(Dermacentor)のダニは,アリゾナ州でほとんどみられない.2002~04 年に,アリゾナ州東部農村地帯におけるロッキー山紅斑熱の発生地域を調査した.
ロッキー山紅斑熱の疑いがある患者から血液と組織の標本を採取し,患者の家の敷地からマダニを採取した.病原体を特定するために,血清学的検査,分子的検査,免疫組織化学的検査,培養検査を行った.一定の臨床検査基準に基づき,患者をロッキー山紅斑熱感染の確定症例またはその可能性のある症例に分類した.
ロッキー山紅斑熱感染患者計 16 例(感染確定症例 11 例,感染可能性症例 5 例)が同定された.このうち,13 例(81%)が 12 歳以下の小児で,15 例(94%)が入院し,2 例(12%)が死亡した.クリイロコイタマダニ(Rhipicephalus sanguineus)の密集群が,患者の飼い犬と自宅の庭で確認された.ロッキー山紅斑熱の確定症例はすべて,ダニが寄生するイヌと接触しており,4 例が発症前にダニに咬まれた経験があると報告した.1 世帯で採取した吸血していない複数のクリイロコイタマダニから R. rickettsii の DNA が検出され,それらのマダニから R. rickettsii の分離株が培養された.
この研究は,アリゾナ州東部にロッキー山紅斑熱が存在し,イヌに寄生する一般的なマダニ(R. sanguineus)が R. rickettsii の媒介動物として関与していることを立証している.クリイロコイタマダニは広範に分布しているため, R. rickettsii が他の地域でも伝播する可能性が懸念される.