August 18, 2005 Vol. 353 No. 7
高齢者における主な手術の実施にみられる人種の傾向
Racial Trends in the Use of Major Procedures among the Elderly
A.K. Jha and Others
患者の人種によって主な手術の実施率に差があることはよく知られている.このような差を縮小するための国や地方の施策が成功しているかどうかは不明である.
1992~2001 年にメディケアに加入した男女を対象に,黒人患者と白人患者で実施率に差があることがこれまでに示されている 9 種の外科手技について,年齢調整年間実施率のデータを検討した.また,9 手技のうち,冠動脈バイパス術(CABG),頸動脈内膜切除術,股関節全置換術の 3 手技について,病院紹介地域別にデータを検討した.
1992 年に全米では,調査したすべての手技について,白人患者のほうが黒人患者よりも実施率が高かった.白人と黒人の実施率の差は,1992 年から 2001 年のあいだに,9 手技のうち 5 手技で有意に拡大し,3 手技で変化がなく,1 手技では有意に縮小した.各手技とも解析に十分なサンプル数を有していた 158 ヵ所の病院紹介地域(黒人男性と白人男性で 79 地域,黒人女性と白人女性で 79 地域)において,CABG,頸動脈内膜切除術,股関節全置換術の実施率を調べた.1990 年代初めには,すべての病院紹介地域で,白人のほうが黒人よりも 3 手技の実施率が高いことが明らかになった.2001 年には,3 手技の実施率に関する白人と黒人(男女とも)の差は,22 の病院紹介地域で有意に縮小し,42 の病院紹介地域で有意に拡大し,残りの病院紹介地域では有意な変化はみられなかった.調査期間終了時に,3 手技のいずれについても,男女とも白人と黒人の実施率の差が解消された病院紹介地域はないことが明らかになった.
1990 年代の 10 年間に,全米と地方の双方で,高額な外科手技の実施について,人種格差を除くための取り組みが成功したという証拠は得られなかった.