March 23, 2006 Vol. 354 No. 12
冠動脈アテローム性動脈硬化の進行に対する ACAT 阻害の影響
Effect of ACAT Inhibition on the Progression of Coronary Atherosclerosis
S.E. Nissen and Others
アシル CoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)は,さまざまな組織中のコレステロールをエステル化する酵素である.一部の動物モデルでは,ACAT 阻害薬には抗アテローム性動脈硬化作用がある.
血管造影で冠動脈疾患が認められた患者 408 例に対し,血管内超音波検査を実施した.すべての患者には二次予防として通常の治療を行い,必要に応じてスタチン投与も行った.患者を,ACAT 阻害薬パクチミベ(pactimibe)(100 mg/日)またはマッチさせたプラセボのいずれかを投与する群に無作為に割付けた.18 ヵ月後に再び超音波検査を行い,アテローム性動脈硬化の進行を評価した.
アテローム性動脈硬化の進行を分析する主要有効性変数(パーセントで表したアテローム量の変化)は,パクチミベ群とプラセボ群で同等であった(それぞれ 0.69%,0.59%;P=0.77).しかし,血管内超音波検査により評価した 2 つの副次的有効性変数では,パクチミベ治療の好ましくない影響が示された.ベースライン値と比較して,標準化総アテローム量にはプラセボ群で有意な減少が認められたが(-5.6 mm3,P=0.001),パクチミベ群では認められなかった(-1.3 mm3,P=0.39;群間の比較について P=0.03).もっとも病状の重い 10 mm のサブセグメントでのアテローム量は,プラセボ群で 3.2 mm3 減少したのに対し,パクチミベ群では 1.3 mm3 の減少であった(P=0.01).有害な心血管転帰の全発生率は両群で同等であった(P=0.53).
冠動脈疾患患者に対し,ACAT 阻害薬による治療では主要有効性変数(アテローム量パーセント)は改善せず,血管内超音波検査で評価した 2 つの主な副次的有効性評価項目に有害な影響がみられた.ACAT 阻害は,アテローム性動脈硬化を阻止するための有効な方法ではなく,アテローム形成を促進するおそれがある.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00268515)