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January 12, 2006 Vol. 354 No. 2

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肺移植レシピエントにおける吸入型シクロスポリンに関する無作為化試験
A Randomized Trial of Inhaled Cyclosporine in Lung-Transplant Recipients

A.T. Iacono and Others

背景

免疫抑制薬を用いた従来の治療レジメンでは,肺移植後の慢性的な拒絶反応を予防できないことが多い.従来の全身的免疫抑制療法に加え,シクロスポリンを局所投与すれば,急性および慢性の拒絶反応の予防に役立つと考えられる.

方 法

吸入型シクロスポリンに関する単一施設無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った.吸入型シクロスポリンは,移植後 6 週間以内に投与を開始し,全身的免疫抑制療法と併用した.計 58 例の患者を,移植後 2 年間,週 3 日のエアゾール式のシクロスポリン 300 mg 吸入(28 例),あるいはエアゾール式のプラセボ吸入(30 例)に無作為に割付けた.主要エンドポイントは,組織学的急性拒絶反応の発生率とした.

結 果

グレード 2 以上の急性拒絶反応の発生率は,シクロスポリン群とプラセボ群で同等であり,シクロスポリン群で 0.44 件/患者・年(95%信頼区間 0.31~0.62),プラセボ群で 0.46 件/患者・年(95%信頼区間 0.33~0.64)であった(ポアソン回帰による P=0.87).生存はエアゾール式のシクロスポリンで改善し,死亡したのはシクロスポリン群で 3 例,プラセボ群で 14 例であった(死亡の相対リスク 0.20,95%信頼区間 0.06~0.07,P=0.01).また,シクロスポリンにより慢性拒絶反応のない生存も改善したことが,肺活量の測定(シクロスポリン群でイベント 10 件,プラセボ群でイベント 20 件;慢性拒絶反応の相対リスク 0.38;95%信頼区間 0.18~0.82;P=0.01)および組織学的分析(イベント,6 件 対 19 件;相対リスク 0.27;95%信頼区間 0.11~0.67;P=0.005)により明らかになった.腎毒性と日和見感染のリスクは,シクロスポリン群とプラセボ群で同等であった.

結 論

吸入型シクロスポリンは,急性拒絶反応の発生率を改善しなかったが,生存を改善し,慢性拒絶反応のない生存期間を延長させた.(ClinicalTrials.gov 識別番号:NCT00268515)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2006; 354 : 141 - 50. )