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April 20, 2006 Vol. 354 No. 16

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持続性の急性呼吸窮迫症候群に対する副腎皮質ステロイドの有効性と安全性
Efficacy and Safety of Corticosteroids for Persistent Acute Respiratory Distress Syndrome

The National Heart, Lung, and Blood Institute Acute Respiratory Distress Syndrome (ARDS) Clinical Trials Network

背景

持続性の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は,過剰な線維増殖,炎症の進行,長期の人工換気の使用,高い死亡リスクを特徴とする.これまでの報告で,副腎皮質ステロイドにより生存率が改善する可能性が示唆されたため,われわれは,持続性 ARDS 患者を対象に,副腎皮質ステロイドの多施設共同無作為化比較試験を実施した.

方 法

ARDS が 7 日以上持続している患者 180 例を,メチルプレドニゾロンを投与する群とプラセボを投与する群に,二重盲検で無作為に割付けた.主要エンドポイントは,60 日後の死亡率とした.副次的エンドポイントは,人工呼吸器を使用しなかった日数,臓器不全を起さなかった日数,炎症および線維増殖の生化学マーカー,感染性合併症などとした.

結 果

60 日後の院内死亡率は,プラセボ群で 28.6%(95%信頼区間 20.3~38.6%),メチルプレドニゾロン群で 29.2%(95%信頼区間 20.8~39.4%)であり(P=1.0),180 日後には,それぞれ 31.9%(95%信頼区間 23.2~42.0%),31.5%(95%信頼区間 22.8~41.7%)であった(P=1.0).メチルプレドゾロンは,ARDS 発症後 14 日以上経過してから登録した患者において,60 日死亡率と 180 日死亡率の有意な上昇と関連していた.メチルプレドニゾロンは,酸素化,呼吸器系コンプライアンス,昇圧療法期間の短縮を伴う血圧の改善に関連して,最初の 28 日間における人工呼吸器を使用しなかった日数,およびショックを起さなかった日数を増加させた.プラセボと比較して,メチルプレドニゾロンは感染性合併症の発症率を上昇させなかったが,神経筋脱力の発症率がより高くなった.

結 論

これらの結果は,メチルプレドニゾロンに心肺機能の改善効果があっても,持続性 ARDS に対するルーチンの使用を支持するものではない.また,ARDS 発症後 2 週間以上経過してからメチルプレドニゾロン投与を開始すると,死亡リスクが上昇する可能性がある.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00295269)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2006; 354 : 1671 - 84. )