CD19 遺伝子の変異に起因する抗体欠損症候群
An Antibody-Deficiency Syndrome Due to Mutations in the CD19 Gene
M.C. van Zelm and Others
CD19 蛋白は,成熟 B 細胞の細胞膜上で,CD21,CD81,CD225 と複合体を形成する.この複合体は,B 細胞抗原受容体と共に,抗原による活性化の閾値を下げるシグナルを B 細胞に送る.
血縁関係のない 2 家族の患者 4 例を評価した.患者は,感染感受性が高く,低ガンマグロブリン血症を呈し,血液中の成熟 B 細胞数は正常であった.4 例全例で CD19 遺伝子の変異が検出された.患者およびその第一度近親者について,CD19 遺伝子の遺伝子配列を決定し,フローサイトメトリーにより B 細胞の免疫表現型を決定した.また,リンパ組織の免疫組織化学染色,DNA 解析,mRNA 解析を実施した.in vitro 刺激により,B 細胞受容体の活性化誘発に対する B 細胞の反応を検討した.狂犬病ワクチン接種後の抗体反応についても検討した.
4 例全例に CD19 遺伝子のホモ変異が認められた.CD19 の発現量は,1 例では検出不能であり,他の 3 例では大幅に低下していた.4 例全例で,CD21 の発現量が低下していたのに対し,CD81 と CD225 の発現量は正常であった.骨髄の前駆 B 細胞コンパートメントの組成と血液中の B 細胞数は正常であった.しかし,CD27 陽性メモリー B 細胞数および CD5 陽性 B 細胞数は減少していた.リンパ組織の二次濾胞は,大きさが小~正常で,細胞組成は正常であった.免疫グロブリンクラススイッチが分子的に示された少数の B 細胞には,体細胞変異のある VH-Cα および VH-Cγ 転写産物が認められた.患者の B 細胞では,in vitro 刺激に対する B 細胞受容体を介した反応が低下しており,狂犬病ワクチン接種に対する抗体反応は 4 例全例で不良であった.
CD19 遺伝子の変異は,抗原刺激に対する成熟 B 細胞の反応が低下するタイプの低ガンマグロブリン血症を引き起す.