多発性嚢胞腎における進行性の容積拡大
Volume Progression in Polycystic Kidney Disease
J.J. Grantham and Others
常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)は,嚢胞が多数形成され,腎臓が除々に肥大することを特徴とする.
3 年間にわたる試験で,ADPKD 患者を対象に,総腎容積,総嚢胞容積,イオタラム酸クリアランスの変化率を測定した.患者計 241 例中,ベースラインでの年齢が 15~46 歳の高窒素血症のない患者 232 例において,MRI を用いて総腎容積・総嚢胞容積をイオタラム酸クリアランスと関連付けた.統計的手法には,分散分析,ピアソン相関,多変量回帰分析を含めた.
総腎容積と総嚢胞容積は指数関数的に増加し,この結果は成長に伴う拡大過程と一致していた.214 例のベースラインの平均(±SD)総腎容積は 1,060±642 mL で,3 年間で平均 204±246 mL 増加した(1 年当り 5.27±3.92%,P<0.001).210 例では,この間に総嚢胞容積が 218±263 mL 増加した(P<0.001).ベースラインでの総腎容積は,年齢とは独立して,その後の容積増加率を予測した.51 例では,ベースラインの総腎容量が 1,500 mL を超えており,糸球体濾過率の低下と関連していた(1 年当り 4.33±8.07 mL/分,P<0.001).総腎容積の増加は,PKD1 変異患者 135 例(245±268 mL)のほうが,PKD2 変異患者 28 例(136±100 mL)よりも大きかった(P=0.03).
ADPKD 患者において,嚢胞拡大による腎肥大は,持続的で定量可能であり,腎機能低下と関連している.腎肥大の割合がより高いことは,腎機能のより急速な低下と関連している.