成人のコレラ治療に対するアジスロマイシン単回投与
Single-Dose Azithromycin for the Treatment of Cholera in Adults
D. Saha and Others
アジスロマイシンの単回投与は,小児の重症コレラの治療に有効であるが,成人における有効性はこれまで評価されたことがない.
二重盲検無作為化試験を実施し,コレラ菌(Vibrio cholerae)O1 または O139 が原因の男性重症コレラ患者 195 例を対象に,アジスロマイシンとシプロフロキサシン(それぞれ 1 g [500 mg 錠を 2 錠] を単回投与)の同等性を比較した.患者は 5 日間入院した.便培養を 1 日 1 回行った.主要評価項目は,臨床的有効性(薬物投与後 48 時間以内の水様便の停止)と細菌学的有効性(48 時間後のコレラ菌単離不可能)とした.
臨床的有効例は,アジスロマイシン群 97 例中 71 例(73%)とシプロフロキサシン群 98 例中 26 例(27%)であり(P<0.001),細菌学的有効例は,アジスロマイシン群 97 例中 76 例(78%)とシプロフロキサシン群 98 例中 10 例(10%)であった(P<0.001).アジスロマイシン投与患者では,シプロフロキサシン投与患者と比較して,下痢の期間が短く(中央値,30 時間 対 78 時間),嘔吐の頻度が低く(43% 対 67%),排便回数が少なく(中央値,36 回 対 52 回),排便量が少なかった(中央値,体重 1 kg 当り 114 mL 対 322 mL).シプロフロキサシンの最小発育阻止濃度は,コレラ菌 O1 の単離株 177 個において中央値 0.25 μg/mL で,この地域で行われた過去の研究と比較して 11~83 倍高かった.
アジスロマイシン単回投与は,成人の重症コレラの治療に有効であった.シプロフロキサシンが有効性を欠いていたのは,バングラデシュで現在流行しているコレラ菌 O1 株に対する活性が低下していることが原因かもしれない.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00229944)