January 26, 2006 Vol. 354 No. 4
高齢ドナーからの腎移植における長期治療成績
Long-Term Outcome of Renal Transplantation from Older Donors
G. Remuzzi and Others
高齢ドナーからの移植腎の長期生着率は,若年ドナーからの移植腎に比べて劣る.われわれは,高齢ドナーの腎臓を,移植前に組織学的特徴によって選択することで,長期治療成績に良好な影響がみられるかどうかを検討した.
前向きコホート研究において,60 歳を超えるドナーから,組織学的に評価した腎臓を片方または両方移植した患者 62 例について,治療成績を評価した.これらの治療成績を,組織学的に評価されていない腎臓を片方移植した,マッチさせた 248 例のレシピエントの治療成績と比較した.マッチさせたレシピエントは,60 歳以下のドナーから移植を受けたレシピエント 124 例(既存のデータから最良の治療成績が期待される陽性対照群)と,60 歳を超えるドナーから移植を受けたレシピエント 124 例(期待される治療成績がより不良な陰性対照群)とした.主要エンドポイントは移植腎生着率とした.
中央値 23 ヵ月の追跡期間中,透析に導入されたのは,陽性対照群で 7 例(6%),陰性対照群で 29 例(23%)であったのに対し,組織学的に評価した腎移植群では 4 例(6%)であった.組織学的に評価した腎移植群のレシピエントの移植腎生着率は,陽性対照群のレシピエントと比べて有意な差はなかったが,陰性対照群のレシピエントよりも優れていた(組織学的に評価した腎移植群レシピエントに対する陰性対照群レシピエントの移植腎廃絶のハザード比 3.68,95%信頼区間 1.29~10.52,P=0.02).移植前の組織学的評価を実施することで,試験群全体(P=0.02)と高齢ドナーから腎移植を受けたレシピエント(P=0.01)の両方で,良好な生着率が予測された.
移植前に腎臓の組織学的評価を実施することで,60 歳を超えるドナーからの片方または両方の移植腎で,優れた長期生着率が得られる.この方法は,腎移植のためのドナー・臓器プールの拡大に役立つ可能性がある.