September 14, 2006 Vol. 355 No. 11
直腸癌における術前放射線療法と化学療法の併用
Chemotherapy with Preoperative Radiotherapy in Rectal Cancer
J.-F. Bosset and Others
術前放射線療法は,一部の直腸癌患者に推奨されている.直腸癌の治療において,術前放射線療法への化学療法の追加と,術後化学療法の実施について評価した.
臨床病期 T3 または T4 の切除可能な直腸癌患者を,術前放射線療法,術前放射線療法+術前化学療法(術前化学放射線療法),術前放射線療法+術後化学療法,術前化学放射線療法+術後化学療法のいずれかに無作為に割り付けた.放射線療法は 5 週間で 45 Gy を照射することとした.化学療法は,フルオロウラシル(350 mg/m2 体表面積/日)とロイコボリン(20 mg/m2/日)の 5 日間投与を 1 コースとし,術前化学放射線療法群および術前化学放射線療法+術後化学療法群に対して,術前に放射線療法との併用で 2 コース実施した.また,術前放射線療法+術後化学療法群および術前化学放射線療法+術後化学療法群には,術後に 4 コース実施することとした.主要エンドポイントは全生存とした.
1,011 例の患者を試験に登録した.全生存には,化学療法を術前に受けた患者と受けなかった患者(P=0.84),術後に受けた患者と受けなかった患者(P=0.12)で,有意差は認められなかった.4 群すべてを併せた 5 年全生存率は 65.2%であった.局所再発の 5 年累積発生率は,術前化学療法群で 8.7%,術後化学療法群で 9.6%,術前・術後両方に化学療法を受けた群で 7.6%であったが,化学療法を受けなかった群では 17.1%であった(P=0.002).治療アドヒアランスは,術前化学療法で 82.0%,術後化学療法で 42.9%であった.
術前放射線療法を受ける直腸癌患者に対して,フルオロウラシルベースの化学療法を術前または術後に追加しても,生存率に有意な効果は認められなかった.しかし,化学療法は,術前・術後のいずれに行っても,局所管理に有意な利益をもたらす.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00002523)