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November 16, 2006 Vol. 355 No. 20

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慢性腎疾患と貧血を呈する患者におけるヘモグロビン値の正常化
Normalization of Hemoglobin Level in Patients with Chronic Kidney Disease and Anemia

T.B. Drüeke and Others

背景

病期 III 期または IV 期の慢性腎疾患患者において,貧血を改善することで心血管転帰が改善するかどうかは不明である.

方 法

糸球体濾過率(GFR)の推定値が体表面積 1.73 m2 当り 15.0~35.0 mL/分で,軽度から中等度の貧血(ヘモグロビン値 11.0~12.5 g/dL)を呈する患者 603 例を,目標ヘモグロビン値を正常範囲とする群(13.0~15.0 g/dL,第 1 群)と,正常範囲以下とする群(10.5~11.5 g/dL,第 2 群)に無作為に割り付けた.エリスロポエチン(エポエチン β)の皮下投与は,無作為化の時点(第 1 群)か,ヘモグロビン値が 10.5 g/dL 以下に低下した場合にのみ(第 2 群)開始した.主要エンドポイントは,8 つの心血管イベントの複合とし,副次的エンドポイントは,左室重量係数,QOL スコア,慢性腎疾患の増悪などとした.

結 果

3 年間の試験期間中,貧血が完全に改善されても,最初の心血管イベントの発生頻度に影響はみられなかった(第 1 群 58 件 対 第 2 群 47 件,ハザード比 0.78,95%信頼区間 0.53~1.14,P=0.20).左室重量係数は両群ともに安定していた.ベースラインの GFR 推定値の平均は,第 1 群で 24.9 mL/分,第 2 群で 24.2 mL/分であり,1 年当りそれぞれ 3.6 mL/分,3.1 mL/分低下した(P=0.40).透析を必要とした患者は第 1 群のほうが第 2 群より多かった(127 例 対 111 例,P=0.03).全般的健康状態と身体機能は有意に改善された(第 2 群と比較して第 1 群でそれぞれ P=0.003,P<0.001).両群間で,有害事象の発生率の合計に有意差は認められなかったが,高血圧発作と頭痛は第 1 群でより多くみられた.

結 論

慢性腎疾患患者において,早期に貧血を完全に改善しても,心血管イベントリスクは減少しない.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00321919)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2006; 355 : 2071 - 84. )