November 16, 2006 Vol. 355 No. 20
パクリタキセル被覆バルーンカテーテルを用いた冠動脈ステント内再狭窄治療
Treatment of Coronary In-Stent Restenosis with a Paclitaxel-Coated Balloon Catheter
B. Scheller and Others
冠動脈ステント内再狭窄の治療は,ステント内再狭窄の再発率が高いためむずかしい.われわれは,冠動脈ステント内再狭窄の治療におけるパクリタキセル被覆バルーンカテーテルの有効性と安全性を評価した.
冠動脈形成術におけるパクリタキセル被覆バルーンカテーテル(バルーン表面積 [mm2] 当り 3 μg)と非被覆バルーンカテーテルの効果を比較する無作為化二重盲検多施設共同試験に,ステント内再狭窄患者 52 例を登録した.主要エンドポイントは,血管造影で確認される遅発性血管内腔狭窄とした.副次的エンドポイントは,再狭窄率(二値変数)および重大な有害心イベントなどとした.
両群とも, 80%の患者に多枝病変が認められた.定量的血管造影では,ベースラインの測定結果に有意差がないことが示された.6 ヵ月の時点で,血管造影により示されたステント留置部位における遅発性血管内腔狭窄の平均(±SD)は,非被覆バルーン群で 0.74±0.86 mm,被覆バルーン群で 0.03±0.48 mm であった(P=0.002).再狭窄がみられたのは,非被覆バルーン群の 23 例では計 10 例(43%)であったのに対し,被覆バルーン群では 22 例中 1 例(5%)であった(P=0.002).12 ヵ月の時点で,重大な有害心イベントの発生率は,非被覆バルーン群で 31%,被覆バルーン群で 4%であった(P=0.01).この差は主に,非被覆バルーン群の患者 6 例で,標的病変の血行再建術が必要であったことによるものであった(P=0.02).
パクリタキセル被覆バルーンカテーテルを用いた冠動脈ステント内再狭窄治療により,再狭窄の発生が有意に減少した.これらのデータから,局所的薬物送達によって再狭窄を予防する場合,病変部位でのステント留置ならびに持続的な薬物放出は必要でない可能性が示唆される.(ClinicalTrials.gov number,NCT00106587)