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August 24, 2006 Vol. 355 No. 8

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TGF-β 受容体の変異に起因する動脈瘤症候群
Aneurysm Syndromes Caused by Mutations in the TGF-β Receptor

B.L. Loeys and Others

背景

ロイス–ディーツ症候群は,広範な全身症状を伴う,最近報告された常染色体優性の大動脈瘤症候群である.この疾患は,動脈屈曲と動脈瘤,両眼隔離,口蓋垂裂または口蓋裂の 3 つを特徴とし,トランスフォーミング成長因子β受容体 1 と 2(それぞれ TGFBR1TGFBR2)をコードする遺伝子のヘテロ接合性変異に起因する.

方 法

罹患家族 52 組について,臨床的特徴および分子生物学的特徴を調べた.発端者 40 例にはロイス–ディーツ症候群に典型的な症状が認められた.この症候群と血管型エーラス–ダンロス症候群の表現型に重複があることを考慮し,特徴的な III 型コラーゲン異常またはロイス–ディーツ症候群で頭蓋顔面に現れる特徴を伴わない,血管型エーラス–ダンロス症候群患者 40 例の追加コホートをスクリーニングした.

結 果

典型的なロイス–ディーツ症候群(I 型)の発端者すべてと,血管型エーラス–ダンロス症候群(ロイス–ディーツ症候群 II 型)を示す発端者 12 例で,TGFBR1 または TGFBR2 に変異が確認された.両方の型の自然経過は,進行性の動脈瘤(死亡年齢の平均,26.0 歳)と,妊娠関連の合併症の発生率が高いこと(女性 12 例中 6 例)を特徴とした.ロイス–ディーツ症候群 I 型の患者は II 型の患者よりも心血管手術を早期に受け(平均年齢,16.9 歳 対 26.9 歳),若年で死亡した(22.6 歳 対 31.8 歳).このコホートでは血管手術が 59 件行われ,1 例が術中に死亡した.術中死亡率が低い点で,ロイス–ディーツ症候群は血管型エーラス–ダンロス症候群と区別される.

結 論

TGFBR1 または TGFBR2 に変異があると,患者は進行性の広範な血管疾患に罹患しやすくなる.臨床像の重症度から,転帰が予測される.血管型エーラス–ダンロス症候群のような症状を示す患者の遺伝子型の判定は,予防的血管手術の実施やその時期などの治療指針に使用できる可能性がある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2006; 355 : 788 - 98. )