心筋梗塞のリスクと心血管死亡に対するロシグリタゾンの影響
Effect of Rosiglitazone on the Risk of Myocardial Infarction and Death from Cardiovascular Causes
S.E. Nissen and K. Wolski
ロシグリタゾン(rosiglitazone)は 2 型糖尿病患者の治療に広く使用されているが,心血管系の疾病罹患率と死亡に対するその影響は明らかにされていない.
発表された論文,米国食品医薬品局(FDA)のウェブサイト,製薬会社(グラクソ・スミスクライン社)が管理している臨床試験登録の検索を行った.このメタアナリシスへの採択基準は,試験期間が 24 週以上であること,ロシグリタゾンの投与を受けない対照群が無作為に設定されていること,心筋梗塞と心血管死亡に関する転帰データが存在することなどとした.関連のある可能性があった 116 件の試験のうち,42 件が採択基準を満たした.心筋梗塞の発生と心血管死亡をすべて集計した.
固定効果モデルによりデータを統合した.試験 42 件の被験者の平均年齢は約 56 歳,ベースライン時のグリコヘモグロビン値の平均は約 8.2%であった.ロシグリタゾン群では,対照群と比較して,心筋梗塞のオッズ比が 1.43(95%信頼区間 [CI] 1.03~1.98,P=0.03),心血管死亡のオッズ比が 1.64(95% CI 0.98~2.74,P=0.06)であった.
ロシグリタゾンは,心筋梗塞のリスクの有意な上昇と,心血管死亡リスクの境界線上の有意な上昇と関連した.この研究には,イベント時間分析を可能にする一次資料データへのアクセスが欠如していたため,限界があった.こうした限界はあるものの,患者および医療提供者は,2 型糖尿病に対するロシグリタゾン投与は,心血管系への重篤な有害作用を伴う可能性があることを考慮すべきである.
本論文(10.1056/NEJMoa072761)は,2007 年 5 月 21 日に www.nejm.org で発表された.