インドにおける内臓リーシュマニア症に対するパロモマイシン注射薬
Injectable Paromomycin for Visceral Leishmaniasis in India
S. Sundar and Others
内臓リーシュマニア症(カラアザール)は,南アジア,アフリカ,ブラジルにおいて,農村部の資源の乏しい地域で広範囲にわたり発症する.安全かつ有効で,安価な新規治療法が必要とされている.インドのビハール州において,無作為化対照非盲検第 3 相試験を実施し,アミノグリコシド系薬剤パロモマイシン(paromomycin)と現在の標準治療薬であるアムホテリシン B とを比較した.
4 ヵ所の内臓リーシュマニア症治療センターにおいて,ヒト免疫不全ウイルスに感染していない患者で,寄生虫学的検査により内臓リーシュマニア症が確認された 5~55 歳の患者 667 例を,3:1 の割合で,パロモマイシン 11 mg/kg 体重/日を 21 日間毎日筋肉内投与する群(502 例)と,アムホテリシン B 1 mg/kg/日を 30 日間 1 日おきに静脈内投与する群(165 例)に無作為に割り付けた.最終的に治癒したかどうかを,治療終了後 6 ヵ月の時点で評価した.安全性の評価には,毎日の臨床評価,および週 1 回の臨床検査と聴力検査の評価などが含まれた.非劣性の境界基準を 10 パーセントポイントに設定した非劣性検定を用いて,6 ヵ月の時点の治癒率を比較した.
パロモマイシンはアムホテリシン B に対して非劣性であることが示された(最終治癒率 94.6% 対 98.8%,差 4.2 パーセントポイント,97.5%信頼区間の上限 6.9,P<0.001).両群の死亡率は 1%未満であった.有害事象のうち,パロモマイシン群でアムホテリシン B 群より多く認められたのは,アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ値の一過性の上昇(正常範囲上限の 3 倍超)(6% 対 2%,P=0.02),一時的な可逆性の中毒性難聴(2% 対 0 %,P=0.20),注射部位の疼痛(55% 対 0%,P<0.001)などであった.アムホテリシン B 群ではパロモマイシン群よりも,腎障害(4% 対 0%,P<0.001),発熱(57% 対 3%),硬直(24% 対 0%,P<0.001),嘔吐(10% 対 1%未満,P<0.001)などが多く認められた.
インドでの内臓リーシュマニア症の治療において,パロモマイシンはアムホテリシン B に対して非劣性であることが示された.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00216346)