December 6, 2007 Vol. 357 No. 23
PM10 への曝露量の減少と加齢による肺機能低下の軽減
Reduced Exposure to PM10 and Attenuated Age-Related Decline in Lung Function
S.H. Downs and Others
大気汚染は,成人における肺機能低下などの健康障害と関連していることが示されている.小児では,空気のより清浄な地域へ移住することで大気汚染による肺機能への有害な影響を軽減できることが示されているが,成人では示されていない.
1990 年に人口登録から無作為に抽出した成人 9,651 例(18~60 歳)について前向き研究を行った.1991 年に評価を行い,2002 年に 8,047 例に対して再評価を行った.肺気量と呼気流量(努力肺活量 [FVC],1 秒量 [FEV1],1 秒率 [FEV1/FVC],最大呼気中間流量 [FEF25-75] など),喫煙習慣,居住地ごとに割り当てられた有効な拡散モデルから得られた,空気力学的直径が 10 μm 未満の粒子(PM10)の空間解析濃度に関して,1991 年と 2002 年の両評価時および調査期間中に,4,742 例の完全情報を得た.
各個人住居戸外での PM10 に対する全体的な曝露量は,11 年間の追跡期間を通して減少した(中央値 -5.3 μg/m3,四分位範囲 -7.5~-4.2).交絡因子,ベースラインにおける PM10 濃度,地域内の集積度について補正した混合モデル回帰分析では,PM10 の減少と,FEV1(P=0.045),1 秒率(P=0.02),FEF25-75(P=0.001)の低下率とのあいだに有意な負の関連が認められた.11 年間で PM10 が 10 μg/m3 減少したことにより,年間低下率が,最終的に FEV1 では 9%,FEF25-75 では 16%減少した.1 回目と 2 回目の評価のあいだの累積曝露量も同様の関連を示した.
空気中の浮遊微粒子への曝露が減少すれば,PM10 への曝露に関連した肺機能低下は軽減されると考えられる.その影響は,末梢気道機能を反映する検査でより大きく認められる.