December 13, 2007 Vol. 357 No. 24
サハラ以南アフリカにおける成人の細菌性髄膜炎に対するコルチコステロイド投与
Corticosteroids for Bacterial Meningitis in Adults in Sub-Saharan Africa
M. Scarborough and Others
サハラ以南アフリカでは,細菌性髄膜炎は頻度の高い疾患であり,高い死亡率を伴う.コルチコステロイドを用いた補助療法は,先進国では成人の死亡率を低下させることが示されているが,発展途上国や進行ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染下に関しては十分に検討されていない.
マラウイのブランタイアで,入院時診断が細菌性髄膜炎であった成人を対象として,デキサメタゾン(16 mg を 1 日 2 回,4 日間)の無作為化二重盲検プラセボ対照試験と,セフトリアキソン(2 g を 1 日 2 回,10 日間)の筋肉内投与と静脈内投与とを比較する非盲検試験を行った.主要転帰は,無作為化後 40 日の時点での死亡とした.
計 465 例の患者(90%は HIV 陽性)をデキサメタゾン群(233 例)とプラセボ群(232 例)に無作為に割り付け,各群においてさらに,セフトリアキソン筋肉内投与(230 例)とセフトリアキソン静脈内投与(235 例)のいずれかに割り付けた.40 日の時点での死亡率は,intention-to-treat 解析ではコルチコステロイド群(231 例中 129 例)とプラセボ群(228 例中 120 例)とで有意差は認められず(オッズ比 1.14,95%信頼区間 [CI] 0.79~1.64),また,肺炎球菌性髄膜炎であることが確認された患者(コルチコステロイド群 129 例中 68 例に対し,プラセボ群 143 例中 72 例)に解析を限定した場合にも,有意差はみられなかった(オッズ比 1.10,95% CI 0.68~1.77).身体障害と死亡の複合転帰,聴覚障害,有害事象に関して,群間で有意差はなかった.セフトリアキソン静脈内投与群(230 例中 121 例)とセフトリアキソン筋肉内投与群(229 例中 128 例)のあいだで,死亡率に差はなかった(オッズ比 0.88,95% CI 0.61~1.27).
HIV 感染の有病率が高い地域の成人の細菌性髄膜炎に対して,デキサメタゾンを用いた補助療法を行ったところ,死亡率,罹患率はいずれも低下しなかった.同条件下で,細菌性髄膜炎に対するセフトリアキソンの筋肉内投与は,静脈内投与に比べて劣ることはなかった.(Current Controlled Trials 番号:ISRCTN31371499)