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January 10, 2008 Vol. 358 No. 2

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結節性硬化症およびリンパ脈管筋腫症でみられる血管筋脂肪腫に対するシロリムス投与
Sirolimus for Angiomyolipoma in Tuberous Sclerosis Complex or Lymphangioleiomyomatosis

J.J. Bissler and Others

背景

結節性硬化症や散発性リンパ脈管筋腫症の患者でみられる血管筋脂肪腫は,結節性硬化症遺伝子が変異して,哺乳類のラパマイシン標的蛋白(mammalian target of rapamycin;mTOR)が構成的に活性化されることと関連している.シロリムス(sirolimus)は mTOR のシグナル伝達を抑制する.

方 法

シロリムスにより血管筋脂肪腫の容積が減少するかどうかを明らかにするため,結節性硬化症または散発性リンパ脈管筋腫症の患者を対象に,24 ヵ月間の非無作為化非盲検試験を行った.シロリムスは最初の 12 ヵ月間のみ投与した.血管筋脂肪腫と脳病変の連続した MRI,肺嚢胞の CT,肺機能検査を実施した.

結 果

登録患者 25 例のうち,20 例が 12 ヵ月時の評価を完了し,18 例が 24 ヵ月時の評価を完了した.12 ヵ月の時点で血管筋脂肪腫の容積の平均(±SD)はベースライン値の 53.2±26.6%であり(P<0.001),24 ヵ月の時点ではベースライン値の 85.9±28.5%であった(P=0.005).24 ヵ月の時点で,5 例では血管筋脂肪腫容積の 30%以上の減少が持続していた.シロリムス療法中,リンパ脈管筋腫症患者では,ベースライン値と比べて,1 秒量(FEV1)の平均は 118±330 mL 増加し(P=0.06),努力肺活量(FVC)は 390±570 mL 増加し(P<0.001),残気量は 439±493 mL 減少した(P=0.02).シロリムスの投与を中止した 1 年後には,ベースライン値と比べて,FEV1 は 62±411 mL 高く,FVC は 346±712 mL 高く,残気量は 333±570 mL 低かったが,脳病変に変化はなかった.5 例では,シロリムス投与中に下痢,腎盂腎炎,口内炎,上気道感染など,6 件の重篤な有害事象を認めた.

結 論

血管筋脂肪腫は,シロリムス療法中に多少退縮したが,投与中止後には容積が増大する傾向がみられた.一部のリンパ脈管筋腫症患者では,スパイロメトリーによる評価項目と空気とらえこみに改善がみられ,投与後も改善が持続した.mTOR シグナル伝達の抑制は,結節性硬化症または散発性リンパ脈管筋腫症の患者の病態を改善する治療法の 1 つとなる可能性がある.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00457808)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2008; 358 : 140 - 51. )