有害な臨床イベントと接触系の活性化に関連する汚染ヘパリン
Contaminated Heparin Associated with Adverse Clinical Events and Activation of the Contact System
T.K. Kishimoto and Others
過硫酸化コンドロイチン硫酸(oversulfated chondroitin sulfate;OSCS)は,世界的に供給されているヘパリンを汚染している化合物である.OSCS が米国とドイツでヘパリンの静脈内投与後に生じた重症のアナフィラキシー様反応の原因であるかどうかを,緊急に解明する必要がある.
米国食品医薬品局(FDA)から入手した,臨床イベントとの関連が疑われるヘパリンのロットと,対照ヘパリンのロットを対象に,OSCS の有無,および汚染物質と観察された臨床有害事象とを結び付ける可能性のある生物活性について盲検下でスクリーニングした.in vitro で接触系の活性化と補体カスケードを分析した.さらにブタにおいて,in vivo で OSCS が問題となった臨床症状を再現できるかどうかを調べた.
汚染された未分画ヘパリンのロットで見つかった OSCS と,合成 OSCS 標準試料は,共にヒト血漿中のキニン・カリクレイン経路を直接活性化した.これにより,強力な血管作動性物質であるブラジキニンが生成される可能性がある.さらに OSCS は,補体系蛋白に由来する強力なアナフィラトキシンである C3a と C5a の生成を誘導した.これら 2 つの経路の活性化は,予想に反し第 XII 因子の液相活性化に依存していた.さまざまな種から得た血漿検体のスクリーニングにより,ブタとヒトは,OSCS の作用に対して同様の感受性を有することが示唆された.OSCS 含有ヘパリンと合成 OSCS をブタに静脈内投与したところ,カリクレイン活性化に関連した低血圧を誘発した.
この研究結果は,関連が疑われるヘパリンのロットに含まれた OSCS と観察された臨床有害事象とのあいだに,生物学的な関連がある可能性があることを示す,科学的根拠となるものである.カリクレインのアミド分解活性を評価する分析を行い,ヘパリンの OSCS や,その他接触系を活性化する可能性のある高度に硫酸化された多糖類汚染物質をスクリーニングすることで,ヘパリンの供給網を保護するための分析試験を補足することができる.
本論文(10.1056/NEJMoa0803200)は,2008 年 4 月 23 日に www.nejm.org で発表された.