ヨーロッパ 22 ヵ国における健康の社会経済的格差
Socioeconomic Inequalities in Health in 22 European Countries
J.P. Mackenbach and Others
多国間の比較は,健康の格差を縮小するための機会を見つけるのに役立つ可能性がある.われわれは,ヨーロッパ全域の 22 ヵ国において,死亡率および自己評価による健康にみられる格差の程度を比較した.
国勢調査に基づく死亡率研究から,教育水準と職業分野に基づいた死亡率に関するデータを得た.死亡は死因によって分類した.死因には,心血管疾患や癌といった頻度の高い原因,喫煙に関連した原因,アルコール摂取に関連した原因,結核や高血圧症といった医療介入の影響を受けやすい原因を含めた.教育や所得に基づいた自己評価による健康・喫煙・肥満に関するデータは,健康調査や多目的調査から得た.国ごとに,社会経済的状態と健康に関する転帰との関連を,回帰に基づいた格差指標を用いて検討した.
ほぼすべての国で,社会経済的状態の低い集団ほど死亡率と健康に関する自己評価が低くなる割合が大幅に高かったが,一部の国では,社会経済的状態のより高い集団とより低い集団のあいだの格差の程度が,ほかの国よりもはるかに大きかった.死亡率の格差は,南ヨーロッパの国々の一部では小さく,東ヨーロッパおよびバルト海沿岸諸国の多くでは非常に大きかった.国ごとにみられるこのようなばらつきは,一部には,喫煙やアルコール摂取に関連した死因,あるいは医療介入の影響を受けやすい死因に起因しているようであった.自己評価による健康の格差の程度にも,国ごとに大きなばらつきがあったが,異なるパターンを示していた.
ヨーロッパ諸国のあいだで,社会経済的状態と関連した健康の格差の程度にばらつきが観察された.これらの格差は,教育機会,所得配分,健康関連行動,および医療へのアクセスを改善することで縮小される可能性がある.