February 21, 2008 Vol. 358 No. 8
アプロチニンが冠動脈バイパス術後の転帰に及ぼす影響
The Effect of Aprotinin on Outcome after Coronary-Artery Bypass Grafting
A.D. Shaw and Others
アプロチニンは最近,心臓手術施行患者の有害転帰と関連することが示唆されている.われわれは,デューク大学医療センター(Duke University Medical Center)にて心臓手術を受けた患者におけるアプロチニンの使用経験について再検討を行った.
1996 年 1 月 1 日~2005 年 12 月 31 日にデューク大学で冠動脈血行再建術を受けた 10,275 例の連続した患者のデータを入手した.各患者がアプロチニン投与を受ける確率を手術前の特性に基づいて予測するロジスティック回帰モデルと,長期生存率(最長 10 年)および血清クレアチニン上昇により判定する腎機能低下を予測するモデルに対して,データを当てはめた.
計 1,343 例(13.2%)がアプロチニン,6,776 例(66.8%)がアミノカプロン酸の投与を受け,2,029 例(20.0%)では抗線溶療法は行われなかった.全例が冠動脈バイパス術を受け,1,181 例(11.5%)では冠動脈バイパス術と心臓弁手術が併用された.リスク補正モデルにおける生存率はアプロチニン投与群でより低く,死亡に対する主作用のハザード比は,抗線溶療法非施行群と比較して 1.32(95%信頼区間 [CI] 1.12~1.55,P=0.003),アミノカプロン酸投与群と比較して 1.27(95% CI 1.10~1.46,P=0.004)であった.アミノカプロン酸の使用や抗線溶療法非施行と比較して,アプロチニンの使用はリスク補正後の血清クレアチニンのより大きな上昇と関連していたが(P<0.001),リスク補正後の透析施行率がより高くなることとは関連しなかった(P=0.56).
アプロチニン投与を受けた患者は,アミノカプロン酸投与を受けた患者や抗線溶薬投与を受けなかった患者に比べて死亡率が高く,血清クレアチニンの上昇が大きかった.