December 11, 2008 Vol. 359 No. 24
小児肥満に関連した FTO 遺伝子変異体とエネルギー摂取量の増加
An Obesity-Associated FTO Gene Variant and Increased Energy Intake in Children
J.E. Cecil and Others
fat mass and obesity-associated(FTO)遺伝子の変異は,一般的な肥満ともっとも強く関連していることが示されている.しかし,FTO の変異体がエネルギーバランスの特定要素の調節にどのような役割を果たすかは明らかにされていない.
4~10 歳のスコットランドの小児 2,726 例を対象に,FTO の変異体 rs9939609 の遺伝子型を決定し,身長と体重を測定した.小児 97 例から成るサブグループを対象に,FTO の変異体と,肥満度,エネルギー消費量,食物摂取量とが関連する可能性について検討した.
全対象集団とサブグループにおいて,rs9939609 の A 対立遺伝子は,体重(それぞれ P=0.003,P=0.049)と体格指数(BMI)(それぞれ P=0.003,P=0.03)の高値と関連していた.表現型を詳しく解析したサブグループでは,A 対立遺伝子は脂肪重量の高値(P=0.01)とも関連していたが,除脂肪体重との関連は認められなかった.A 対立遺伝子を有する小児では,総エネルギー消費量と安静時のエネルギー消費量が多かったが(それぞれ P=0.009,P=0.03),安静時のエネルギー消費量は小児の年齢と体重から予測される値と一致しており,リスクを伴う対立遺伝子を有する場合でも肥満に対する代謝的適応に異常は認められないことが示された.A 対立遺伝子は,体重とは独立してエネルギー摂取量の高値(P=0.006)と関連していた.一方,食物摂取量は,この対立遺伝子を有する小児と有しない小児で同等であった(P=0.82).
肥満の素因となる FTO の変異体は,エネルギー消費量の調節には関与していないようではあるが,食物摂取と食物選択をコントロールする役割をもつ可能性があり,過食の表現型や高エネルギー食嗜好との関連が示唆される.