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April 23, 2009 Vol. 360 No. 17

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HTRA1 の変異と家族性の虚血性脳小血管障害との関連
Association of HTRA1 Mutations and Familial Ischemic Cerebral Small-Vessel Disease

K. Hara and Others

背景

禿頭,変形性脊椎症,非高血圧性の虚血性脳小血管障害を特徴とする,皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体劣性遺伝性脳動脈症(cerebral autosomal recessive arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy:CARASIL)の原因遺伝子は明らかにされていない.

方 法

CARASIL の 5 家族を対象として,連鎖解析,連鎖領域の精密マッピング,候補遺伝子の塩基配列解析を行った.また,野生型遺伝子と変異型遺伝子の遺伝子産物の機能解析,形質転換成長因子 β(TGF-β)ファミリーメンバーによるシグナル伝達の評価を行い,CARASIL 患者 2 例の大脳小動脈において関連遺伝子,蛋白の発現を検討した.

結 果

CARASIL の原因遺伝子は染色体 10q 上の 2.4 Mb の領域に連鎖していた.この領域には HtrA セリンプロテアーゼ 1(HTRA1)遺伝子が含まれる.HTRA1 は,TGF-β ファミリーメンバーによるシグナル伝達を抑制する機能をもつセリンプロテアーゼである.CARASIL 患者の HTRA1 の塩基配列解析で,2 つのナンセンス変異と 2 つのミスセンス変異を見出した.このうち,ミスセンス変異と 1 つのナンセンス変異型の HTRA1 では,プロテアーゼ活性が低下し,TGF-β ファミリーによるシグナル伝達を抑制できなかった.もう 1 つのナンセンス変異では,ナンセンス変異依存メッセンジャー RNA 分解機構により,HTRA1 蛋白は減少した.患者の脳小動脈の免疫組織化学的解析から,肥厚した内膜では,エキストラドメイン A 領域を含むフィブロネクチンとバーシカンが,中膜では TGF-β1 が発現亢進していた.

結 論

CARASIL は HTRA1 遺伝子の変異と関連している.今回の結果は,TGF-β ファミリーによるシグナル伝達の抑制障害と,虚血性脳小血管障害,禿頭,変形性脊椎症との関連を示す.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2009; 360 : 1729 - 39. )