急性心筋梗塞に対する血栓溶解療法後にルーチンに行う早期血管形成術
Routine Early Angioplasty after Fibrinolysis for Acute Myocardial Infarction
W.J. Cantor and Others
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行できない病院に搬送された ST 上昇型心筋梗塞患者の多くは,初回 PCI を適時に受けられず血栓溶解療法を受ける.血栓溶解療法後ルーチンに行う PCI の意義,および至適施行時期は確立されていない.
ST 上昇型心筋梗塞を発症し,PCI を施行できない施設で血栓溶解療法を受けた高リスク患者 1,059 例を,標準的治療(必要に応じて救済的 PCI のために他院に移送するが,それ以外は待機的に冠動脈造影)を行う群と,ただちに他院に移送し血栓溶解療法後 6 時間以内に PCI を行う治療戦略をとる群(ルーチン早期 PCI 群)のいずれかに無作為に割り付けた.全例に,アスピリンとテネクテプラーゼ(tenecteplase)に,ヘパリンまたはエノキサパリンを投与し,クロピドグレルの併用を推奨した.主要エンドポイントは,30 日以内の死亡,心筋梗塞の再発,虚血の再発,うっ血性心不全の発症または増悪,心原性ショックの複合とした.
心カテーテルは,標準的治療群では 88.7%の患者に無作為化後中央値 32.5 時間で行われたのに対し,ルーチン早期 PCI 群では 98.5%の患者に無作為化後中央値 2.8 時間で行われた.30 日の時点で,主要エンドポイントは,ルーチン早期 PCI 群の 11.0%,標準的治療群の 17.2%で発生した(早期 PCI の相対リスク 0.64,95%信頼区間 0.47~0.87,P=0.004).重大な出血の発生率に両群間で有意差はみられなかった.
ST 上昇型心筋梗塞を発症し血栓溶解療法を受けた高リスク患者を,血栓溶解療法後 6 時間以内に PCI を施行するため他院に移送することは,標準的治療と比較して,虚血性合併症発生率の有意な低下と関連していた.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00164190)