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June 25, 2009 Vol. 360 No. 26

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全脳照射を行わない小児急性リンパ芽球性白血病治療
Treating Childhood Acute Lymphoblastic Leukemia without Cranial Irradiation

C.-H. Pui and Others

背景

急性リンパ芽球性白血病(ALL)で中枢神経系(CNS)再発リスクの高い小児に対しては,これまで予防的全脳照射が標準的治療法とされてきた.

方 法

新たに ALL と診断された小児全例を対象に,予防的全脳照射を治療から外すことが可能かどうかを検討するため,臨床試験を実施した.評価の可能であった患児 498 例を登録した.治療強度は,寛解導入療法後の症状と,微小残存病変の程度に基づいて決定した.これまでの基準であれば予防的全脳照射の対象となる患児 71 例と,過去に予防的全脳照射を受けたことのある対照患児(過去症例)56 例とで,完全寛解の持続期間を比較した.

結 果

全 498 例における 5 年無イベント生存率は 85.6%(95%信頼区間 [CI] 79.9~91.3),全生存率は 93.5%(95% CI 89.8~97.2)であった.CNS 単独再発の 5 年累積リスクは 2.7%(95% CI 1.1~4.3),全 CNS 再発(単独再発と合併再発を含む)の 5 年累積リスクは 3.9%(95% CI 1.9~5.9)であった.これまでの基準であれば予防的全脳照射の対象となる 71 例は,過去症例 56 例よりも完全寛解の持続期間が有意に長かった(P=0.04).CNS 単独再発をきたした 11 例は,全例が 0.4~5.5 年間の第 2 寛解を得た.診断時に CNS 白血病(CNS-3)であるか腰椎穿刺で芽球が認められること,6 週間の寛解導入療法後の微小残存病変の程度が高い(1%以上)ことは,無イベント生存率がより不良であることと有意に関連していた.CNS 再発の危険因子は,t(1;19)(TCF3-PBX1)に遺伝子変異があること,診断時に CNS 浸潤が認められること,T 細胞免疫表現型であることなどであった.高頻度にみられた有害事象は,アスパラギナーゼに対するアレルギー反応,骨壊死,血栓症,播種性真菌感染症などであった.

結 論

小児 ALL 治療においては,リスクで補正した効果的な化学療法を用いることで,予防的全脳照射を治療から外しても差し支えない.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00137111)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2009; 360 : 2730 - 41. )