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September 10, 2009 Vol. 361 No. 11

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ナタリズマブ投与患者における JC ウイルス不顕性感染の再活性化
Asymptomatic Reactivation of JC Virus in Patients Treated with Natalizumab

Y. Chen and Others

背景

多発性硬化症でナタリズマブ(natalizumab)投与を受けた患者の一部は,進行性多巣性白質脳症(PML)を発症する.PML の病因である JC ウイルスに成人が感染しても,ほとんどは症状がみられない.ナタリズマブへの曝露によって JC ウイルスの不顕性感染が再活性化し,神経向性ウイルスに変化するかどうか検証を試みた.

方 法

多発性硬化症でナタリズマブ投与を受けた連続する 19 例の患者を 18 ヵ月間追跡し,定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて血中と尿中の JC ウイルスの再活性化を調査した.JC ウイルス関連ポリオーマウイルスである BK ウイルスを対照とした.ELISpot 法を用いて JC ウイルスに特異的な T 細胞応答を,ELISA 法を用いて抗体反応を測定し,JC ウイルス制御領域配列を解析した.

結 果

ナタリズマブ療法開始から 12 ヵ月後,19 例の尿中 JC ウイルス保有率は,ベースライン値の 19%から 63%に上昇した(P=0.02).18 ヵ月後,JC ウイルスは 15 例から得られた血漿検体のうち 3 例(20%)と,15 例から得られた末梢血単核球検体のうち 9 例(60%)で検出された(P=0.02).JC ウイルス制御領域配列は,血液検体と,尿検体のほとんどで,PML に通常みられる配列と類似していた.これに対し,BK ウイルスの尿中保有率に変化はみられず,血中からは検出されなかった.JC ウイルスに特異的な細胞性免疫応答は,ナタリズマブ治療開始から 6~12 ヵ月のあいだに有意に低下し,細胞性免疫応答の経時的変動は,JC ウイルスによるウイルス血症がみられた患者でより大きい傾向にあった.PML の臨床徴候や X 線所見がみられた患者はいなかった.

結 論

ナタリズマブ投与を受けた多発性硬化症患者では,JC ウイルスの不顕性感染の再活性化が高頻度に認められる.ウイルス排出は,JC ウイルスに特異的な細胞性免疫応答の一時的な低下との関連がみられる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2009; 361 : 1067 - 74. )