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October 22, 2009 Vol. 361 No. 17

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小児における厳格な血圧コントロールと腎不全の進行
Strict Blood-Pressure Control and Progression of Renal Failure in Children

The ESCAPE Trial Group

背景

慢性腎疾患(CKD)の成人患者では,レニン・アンジオテンシン(RA)系を抑制することにより腎不全の進行を遅らせることができるが,腎保護作用を最適化するための目標血圧値については議論がある.われわれは,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬を一定の高用量で投与されている患児に厳格な血圧コントロールを行い,長期的な腎保護作用を評価した.

方 法

3~18 歳の CKD(糸球体濾過量が 15~80 mL/分/1.73 m2 体表面積)の患児 385 例に対し,6 ヵ月の導入期間後,ラミプリル(ramipril)6 mg/m2/日を投与した.患児を厳格な血圧コントロール(24 時間平均動脈圧 50 パーセンタイル未満を目標)または通常の血圧コントロール(同 50~95 パーセンタイル)に無作為に割り付け,RA 系を標的としない降圧療法を追加して目標を達成した.患児は 5 年間追跡した.主要エンドポイントは,糸球体濾過量の 50%低下,または末期腎不全への進行までの期間とした.副次的エンドポイントは,血圧,糸球体濾過量,尿中蛋白排泄量の変化とした.

結 果

Kaplan-Meier 解析による評価では,主要エンドポイントに達した患児は,厳格な血圧コントロール群で 29.9%であったのに対し,通常の血圧コントロール群では 41.7%であった(ハザード比 0.65,信頼区間 0.44~0.94,P=0.02).有害事象の種類や発生率,試験からの累積脱落率(28.0% 対 26.5%)に両群間で有意差は認められなかった.ACE 阻害薬の継続投与中,血圧コントロールは良好に維持されていたが,蛋白尿は最初に 50%減少した後,徐々に戻った.降圧目標の達成と蛋白尿の減少は,腎疾患の進行抑制の有意な独立予測因子であった.

結 論

CKD の患児では,24 時間血圧の正常低値を目標とする厳格な血圧コントロールにより腎機能に大きな利益が得られる.薬剤による血圧コントロール成功後にみられる蛋白尿の再出現は,長期にわたりACE 阻害薬を投与されている患児に多くみられる.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00221845)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2009; 361 : 1639 - 50. )