November 19, 2009 Vol. 361 No. 21
DOCK8 の変異に関連した複合免疫不全症
Combined Immunodeficiency Associated with DOCK8 Mutations
Q. Zhang and Others
血清 IgE 濃度の上昇を伴う副鼻腔肺・皮膚へのウイルス反復感染は,複合免疫不全症の一部の亜型の特徴である.これらの亜型の遺伝的原因は明らかにされていない.
副鼻腔肺・皮膚へのウイルス反復感染がみられる 8 家族の 11 例について経時的臨床データを収集した.アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションと標的遺伝子の配列決定を行った.発現が消失する変異が予測される変異体を,定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法と免疫ブロット法を用いて確認した.リンパ球の数と機能を in vitro 解析とフローサイトメトリーを用いて評価した.
患者にみられた症状は,反復性の中耳炎,副鼻腔炎,肺炎;外耳炎を伴う反復性の皮膚黄色ブドウ球菌感染症;再発性で重度の単純ヘルペスウイルスまたは帯状疱疹への感染;広範囲に及ぶ伝染性軟属腫への持続感染;ヒトパピローマウイルス感染であった.ほとんどの患者にアナフィラキシーを伴う重度のアトピーが認められ,3 例で扁平上皮癌,1 例で T 細胞リンパ腫・白血病が発生した.血清 IgE 濃度の上昇,好酸球増加,T 細胞数・B 細胞数の減少,血清 IgM 濃度の低下がみられる頻度が高く,IgG 抗体反応はそれぞれ異なった.活性化 CD8 T 細胞は in vitro で増殖しなかった.dedicator of cytokinesis 8 蛋白をコードする遺伝子(DOCK8)における新規のホモ接合欠損または複合ヘテロ接合欠損と点突然変異により,リンパ球の DOCK8 蛋白は消失した.
常染色体劣性の DOCK8 の欠損は,複合免疫不全症の新しい亜型に関連している.