高齢者に対する院内心肺蘇生の疫学研究
Epidemiologic Study of In-Hospital Cardiopulmonary Resuscitation in the Elderly
W.J. Ehlenbach and Others
院内心肺蘇生(CPR)後の生存率は改善しているのか,また,患者特性・病院特性の中に患者の生存を予測するものがあるかどうかは明らかにされていない.
出来高払いメディケアの 1992~2005 年のデータを調査し,米国の病院で CPR を受けた 65 歳以上のメディケア受給者を同定した.CPR の施行率と CPR 後の生存率の経時的動向,および患者レベル・病院レベルでの生存退院の予測因子を検討した.
院内 CPR を受けた患者 433,985 例を同定した.そのうち 18.3%(95%信頼区間 [CI] 18.2~18.5)が生存退院した.1992~2005 年のあいだで,生存率に大きな変化はみられなかった.CPR の全施行率は入院 1,000 件あたり 2.73 件で,黒人患者とその他非白人患者で高かった.死亡前に院内 CPR を受けた患者の割合は経時的に増加し,非白人患者でより高かった.男性であること,より高齢であること,より多くの併存疾患を有すること,専門看護施設からの入院であることで,生存率は低下した.黒人患者の生存の補正オッズは,患者特性が同様の白人患者より 23.6%低かった(95% CI 21.2~25.9).人種と生存の関連については,黒人患者は CPR 後の生存率が低い病院で CPR を受ける傾向があるなど,病院特性に起因するものもあった.院内 CPR で生存した患者のうち,医療施設ではなく自宅へ退院する患者の割合は経時的に減少した.
1992~2005 年において,院内 CPR 後の生存率に改善はみられなかった.CPR 後院内で死亡する割合は増加し,CPR 後生存して自宅へ退院する患者の割合は減少した.黒人は CPR を受ける率が高いが,CPR 後の生存率は低かった.