December 24, 2009 Vol. 361 No. 26
安定冠動脈疾患における高感度心筋トロポニン T アッセイ
A Sensitive Cardiac Troponin T Assay in Stable Coronary Artery Disease
T. Omland and Others
安定冠動脈疾患患者の血漿トロポニン T 値は,従来の検査法ではほとんどの場合検出限界を下回る.これらの患者における,血中トロポニン T のごく低値の分布と規定要因,およびその心血管イベントとの関連は明らかにされていない.
左室機能が維持されている安定冠動脈疾患患者 3,679 例を対象に,新しい高感度アッセイを用いて血漿検体中の心筋トロポニン T 値を測定した.その結果を,追跡期間中央値 5.2 年の心血管イベント発生率との関連で分析した.
この高感度アッセイによると,心筋トロポニン T 値は 3,593 例(97.7%)で検出限界(0.001 μg/L)以上であり,407 例(11.1%)では健常例の 99 パーセンタイル値(0.0133 μg/L)以上であった.ほかの独立した予後予測因子で補正すると,心血管系の原因による死亡の累積発生率(トロポニン T 値の自然対数の単位増加あたりの補正ハザード比 2.09,95%信頼区間 [CI] 1.60~2.74,P<0.001)と心不全の累積発生率(補正ハザード比 2.20,95% CI 1.66~2.90,P<0.001)に,強く段階的な上昇が認められた.トロポニン T 値上昇に伴うリスクの上昇は,従来の心筋トロポニン T アッセイの検出限界よりはるかに低くても認められ,また健常者群の 99 パーセンタイル値より低くても認められた.高感度アッセイで測定したトロポニン T 値と心筋梗塞の発生率に関連は認められなかった(補正ハザード比 1.16,95% CI 0.97~1.40,P=0.11).
安定冠動脈疾患患者において,高感度アッセイで測定した心筋トロポニン T 値は,ほかの独立した予後予測因子で補正すると,心血管系の原因による死亡および心不全の発生率との有意な関連が認められたが,心筋梗塞の発生率との関連は認められなかった.