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July 30, 2009 Vol. 361 No. 5

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幹細胞移植後の白血病におけるミスマッチ HLA の消失
Loss of Mismatched HLA in Leukemia after Stem-Cell Transplantation

L. Vago and Others

背景

再発リスクの高い血液・造血器腫瘍患者において,HLA が部分的に一致した家族ドナーからの造血幹細胞移植は有望な治療法である.このような移植の際にドナー T 細胞を輸注することで,移植後の免疫再構築を促進し,残存病変をコントロールすることが可能になる.

方 法

急性骨髄性白血病または骨髄異形成症候群に対し,ハプロタイプ一致造血幹細胞移植とドナー T 細胞輸注が行われた 43 例の患者を同定し,移植後調査として,骨髄の形態学的検査,ショートタンデムリピートの増幅による造血キメラ状態の評価,HLA タイピングを行った.変異白血病細胞におけるゲノム再配列を,ゲノムの HLA タイピング,マイクロサテライトマッピング,一塩基多型アレイを用いて検討した.診断時に採取した元の白血病細胞と再発時に採取した変異白血病細胞に対する移植後の免疫応答を,リンパ球の混合培養によって解析した.

結 果

ハプロタイプ一致移植とドナー T 細胞の輸注のあとに白血病が再発した 17 例のうち 5 例で,元の白血病細胞の変異体が確認された.変異白血病細胞では,染色体 6p における後天的な片親性ダイソミーによって,ドナーのものとは異なる HLA ハプロタイプが消失していた.ドナー T 細胞と移植後の患者 T 細胞は変異白血病細胞を認識しなかったが,その一方で,診断時に採取した元の白血病細胞は効率的に認識され,殺滅された.

結 論

ハプロタイプ一致造血幹細胞移植とドナー T 細胞の輸注を行った場合,白血病細胞は,ミスマッチ HLA ハプロタイプを消失させることにより,ドナーの抗白血病 T 細胞から逃れることができる.これにより再発が生じる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2009; 361 : 478 - 88. )