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July 22, 2010 Vol. 363 No. 4

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X 連鎖重症複合免疫不全症に対する遺伝子治療の有効性
Efficacy of Gene Therapy for X-Linked Severe Combined Immunodeficiency

S. Hacein-Bey-Abina and Others

背景

先天性免疫不全症に対する遺伝子治療の転帰は明らかにされていない.われわれは,サイトカイン受容体共通 γ 鎖の欠損を特徴とする,X 連鎖重症複合免疫不全症(SCID-X1)の患者 9 例における遺伝子治療の長期転帰を検討した.

方 法

1999~2002 年に,HLA 適合ドナーのいない 9 例の患者に,レトロウイルスを用いて自己由来の CD34+骨髄細胞に ex vivo で γ 鎖を導入した.長期の追跡を行って臨床イベントと免疫機能を評価した.

結 果

追跡期間中央値 9 年(8~11 年)の時点で,8 例が生存していた.9 例中 8 例では,遺伝子治療により当初は免疫機能不全が改善した.しかし,4 例が急性白血病を発症し,1 例が死亡した.導入された T 細胞は,遺伝子治療から最長 10.7 年の時点まで検出された.白血病の生存例 3 例を含む 7 例では免疫再構築が持続し,3 例は免疫グロブリン補充療法を要した.胸腺細胞形成の持続が,ナイーブ T 細胞が持続的に存在することにより確認され,3 例では化学療法後に確認された.全例で,T 細胞受容体レパートリーは多様であった.導入された B 細胞は検出されなかった.免疫不全の改善により,患者の健康状態が改善した.

結 論

約 10 年の追跡調査から,遺伝子治療により SCID-X1 に関連した免疫不全が改善したことが示された.遺伝子治療は,造血幹細胞移植のための HLA 適合ドナーのいない患者やリスクが許容できると考えられる患者にとって,一つの選択肢となる可能性があるが,急性白血病のリスクと関連している.(INSERM ほかから研究助成を受けた)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2010; 363 : 355 - 64. )