IRF8 の変異とヒト樹状細胞免疫不全症
IRF8 Mutations and Human Dendritic-Cell Immunodeficiency
S. Hambleton and Others
ヒト原発性免疫不全症の遺伝学的解析によって,感染に対する生体防御には,特定の細胞集団と分子経路が関与することが明らかにされている.カルメット・ゲラン菌(BCG)ワクチンによる播種性感染は,重症複合免疫不全症などの原発性免疫不全症の初期症状である.罹患者の多くで,播種性 BCG 感染症の原因は不明である.
早期発症播種性 BCG 感染症をはじめとする重症免疫不全症の症状を呈し,造血幹細胞移植を要した乳児 1 例を評価した.また,小児期に播種性であったが治癒しえた BCG 感染症の既往がある健常者 2 例を検討した.これらの 3 例において,単球と樹状細胞のコンパートメントの特徴を調査し,BCG 感染症感受性を付与する可能性のある変異をもつ,候補遺伝子の塩基配列決定を行った.
インターフェロン調節因子 8(IRF8)に影響を及ぼす,2 つの異なる病因変異を検出した.K108E,T80A の変異はいずれも,IRF8 と DNA の相互作用を妨げることによって IRF8 の転写活性を低下させる.K108E 変異体は,血中の単球と樹状細胞が完全に欠損した,常染色体劣性の重症免疫不全症に関連した.T80A 変異体は,常染色体優性の比較的軽症の免疫不全症と,CD11c+CD1c+血中樹状細胞の選択的欠損に関連した.
これらの結果から,単核食細胞の分化に影響を及ぼすヒト原発性免疫不全症の一分類が定義された.また,ヒト IRF8 が,単球と樹状細胞の発生および抗マイコバクテリア免疫にきわめて重要であることも示された.(医学研究評議会ほかから研究助成を受けた.)