December 29, 2011 Vol. 365 No. 26
慢性リンパ性白血病における SF3B1 とその他の新規癌遺伝子
SF3B1 and Other Novel Cancer Genes in Chronic Lymphocytic Leukemia
L. Wang and Others
慢性リンパ性白血病は,成人に好発する臨床的に多様な白血病の一つであるが,その体細胞の遺伝的基盤には依然として不明な点が多い.
慢性リンパ性白血病患者 91 例の白血病細胞から DNA を採取し,88 の全エクソームと全ゲノムの大量並列塩基配列決定を行い,同時にマッチさせた生殖細胞 DNA の塩基配列を決定して,この疾患の体細胞変異スペクトルの特徴を検討した.
高い頻度で変異している遺伝子 9 個が同定された.このうち 4 個は慢性リンパ性白血病における役割が確立しており(TP53 は患者の 15%,ATM は 9%,MYD88 は 10%,NOTCH1 は 4%が保有),5 個については不明である(SF3B1,ZMYM3,MAPK1,FBXW7,DDX3X).SF3B1 は,スプライソソームの触媒コアで機能するが,2 番目に多く変異している遺伝子であった(患者の 15%で変異).SF3B1 変異は主に染色体 11q に欠損を有する腫瘍で発生していた.染色体 11q の欠損は慢性リンパ性白血病患者の予後不良と関連している.さらに,SF3B1 に変異を有する腫瘍検体ではメッセンジャー RNA(mRNA)前駆体スプライシングが変化していることも見出された.
この研究によって慢性リンパ性白血病における体細胞変異の全体像が明らかとなり,慢性リンパ性白血病に寄与する重要な細胞プロセスとしての mRNA 前駆体スプライシングが強調されている.