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January 19, 2012 Vol. 366 No. 3

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非上皮性卵巣癌で高頻度に認められる体細胞 DICER1 変異
Recurrent Somatic DICER1 Mutations in Nonepithelial Ovarian Cancers

A. Heravi-Moussavi and Others

背景

DICER1 は microRNA のプロセシングに必要な RNase III ファミリーのエンドリボヌクレアーゼである.生殖細胞の DICER1 切断型変異が,胸膜肺芽腫-家族性腫瘍・異形成症候群を有する家族で認められている.変異保有者は非上皮性卵巣腫瘍,とくに性索間質性腫瘍のリスクを有する.

方 法

非上皮性卵巣腫瘍 14 検体の全トランスクリプトームまたは全エキソームの塩基配列を決定し,4 検体の DICER1 で DICER1 の RNase IIIb ドメインをコードする領域に変異が密に集積していることを見出した.次に,別の卵巣腫瘍および他の腫瘍の DICER1 のこの領域の塩基配列を決定し,in vitro RNA 切断アッセイを用いてこの変異が DICER1 の酵素活性に及ぼす影響を検討した.

結 果

RNase IIIb ドメインにおける DICER1 の変異は非上皮性卵巣腫瘍 102 検体中 30 検体(29%)に認められた.主にセルトリ・ライディッヒ細胞腫(43 検体中 26 検体,60%)に多く認められ,このうち 4 検体では別の生殖細胞 DICER1 変異を有していた.これらの変異は,microRNA との相互作用および microRNA の切断に重要な RNase IIIb の触媒中心にある金属結合部位をコードするコドンに限られており,検査用の生殖細胞 DNA を入手しえた 16 検体すべてにおいて体細胞に認められた.また,非セミノーム性精巣生殖細胞腫瘍 14 検体中 1 検体,胎児性横紋筋肉腫 5 検体中 2 検体,卵巣上皮癌または子宮内膜癌 266 検体中 1 検体に変異を検出した.変異 DICER1 蛋白では RNase IIIb 活性は低下していたが,RNase IIIa 活性は維持されていた.

結 論

DICER1 の RNase IIIb ドメインにみられる体細胞ミスセンス変異は,非上皮性卵巣腫瘍に高い頻度で認められる.これらの変異により DICER1 の機能が消失することはないが,特定の細胞では機能が変化する.これは microRNA プロセシングの混乱が腫瘍原性をもつようになる可能性のある新たな機序である.(Terry Fox Research Institute ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2012; 366 : 234 - 42. )