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January 5, 2012 Vol. 366 No. 1

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大腸癌における TFAP2E-DKK4 と化学療法抵抗性
TFAP2E-DKK4 and Chemoresistance in Colorectal Cancer

M.P.A. Ebert and Others

背景

進行大腸癌に対し化学療法を行うと生存が改善されるが,全身療法に対する反応性の予測因子は発見されていない.転写因子である AP-2ε をコードする遺伝子(TFAP2E)のゲノム変化,エピジェネティックな変化はヒト癌で高頻度にみられる.dickkopf homolog 4 蛋白をコードする遺伝子(DKK4)は,TFAP2E の下流標的である可能性があり,化学療法に対する抵抗性への関与が示唆されている.この研究の目的は,大腸癌の化学療法への反応性の予測因子としての TFAP2EDKK4 の役割についてさらに検討を行うことである.

方 法

in vitro および大腸癌患者の大腸癌細胞株において TFAP2E の発現,メチル化,機能を解析した.74 例から成る最初のコホートで検討した後,化学療法または化学放射線療法を受けた患者から成る 4 つのコホート(計 220 例)の検討を行った.

結 果

最初のコホート 74 例のうち,38 例(51%)では TFAP2E が高度にメチル化されていた.高メチル化は,原発大腸癌・転移大腸癌の標本および細胞株における TFAP2E の発現低下に関連していた.DKK4 を過剰発現している大腸癌細胞株では,フルオロウラシルに対する化学療法抵抗性が高くなっていたが,イリノテカンまたはオキサリプラチンに対する抵抗性は高くなっていなかった.別の患者から成る 4 つのコホートでは,TFAP2E の高メチル化と化学療法無効とのあいだに有意な関連を認めた(P<0.001).反対に,低メチル化がみられる患者で反応が認められる確率は,集団全体の約 6 倍であった(全体での推定リスク比 5.74,95%信頼区間 3.36~9.79).TFAP2E のエピジェネティックな変化は,重要な癌制御遺伝子の変異,マイクロサテライトの不安定性,フルオロウラシルの代謝に影響を及ぼす他の遺伝子とは独立していた.

結 論

TFAP2E の高メチル化は,大腸癌の化学療法に対する臨床的無効に関連している.機能解析から,TFAP2E 依存的な抵抗性は DKK4 を介するものであることが確認された.TFAP2E が高度にメチル化された大腸癌の患者では,DKK4 を標的とすることが,TFAP2E が介する薬剤抵抗性に対抗するための選択肢となる可能性がある.(ドイツ研究振興協会から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2012; 366 : 44 - 53. )