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February 16, 2012 Vol. 366 No. 7

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拡張型心筋症を引き起こすタイチンの切断
Truncations of Titin Causing Dilated Cardiomyopathy

D.S. Herman and Others

背景

拡張型心筋症と肥大型心筋症は多数の遺伝子の変異から生じる.サルコメア蛋白であるタイチンをコードする遺伝子 TTN は,巨大であるために,心筋症変異に関する解析は十分に行われていない.

方 法

拡張型心筋症患者 312 例,肥大型心筋症患者 231 例,対照 249 例において,次世代シーケンシングまたはジデオキシ法を用いて TTN の塩基配列を解析した.有害な変異体については家族内の同時分離を検討し,臨床的特徴を評価した.

結 果

タイチンの全長を変化させる固有の変異 72 個(ナンセンス 25 個,フレームシフト 23 個,スプライシング 23 個,大きなタンデム挿入 1 個)を同定した.次世代シーケンシングにより解析した被験者では,TTN 変異の頻度は拡張型心筋症患者(203 例中 54 例 [27%])のほうが,肥大型心筋症患者(231 例中 3 例 [1%],P=3×10-16),対照(249 例中 7 例 [3%],P=9×10-14)よりも有意に高かった.TTN 変異は,40 歳超での浸透度が高い(>95%)家族において,拡張型心筋症と同時に分離された(複合ロッドスコア 11.1).拡張型心筋症に関連する変異はタイチンの A 帯に過剰発現していたが,タイチンの Z 板と M 帯の領域には存在しなかった(すべての比較において P≦0.01).全体として,心臓転帰の発生率は TTN 変異の保有者と非保有者とで同程度であったが,男性の保有者では女性の保有者と比較して早期に有害事象が発生した(P=4×10-5).

結 論

TTN 切断型変異は,拡張型心筋症の原因として頻度が高く,おおよそで特発性拡張型心筋症の家族症例の 25%と,散発症例の 18%に発生した.TTN 切断を検出する塩基配列決定法を拡張型心筋症の遺伝子検査に組み込むことによって,検査感度が大幅に上昇する可能性があり,それによって多くの拡張型心筋症患者でより早期の診断と治療介入が可能になるはずである.TTN 切断型変異の機能的影響を明らかにすれば,拡張型心筋症の病態生理に関する理解が向上すると考えられる.(ハワード・ヒューズ医学研究所ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2012; 366 : 619 - 28. )