October 25, 2012 Vol. 367 No. 17
居住地域の特性と居合わせた人による心肺蘇生との関連
Association of Neighborhood Characteristics with Bystander-Initiated CPR
C. Sasson and Others
院外で心停止した人が居合わせた人による心肺蘇生(CPR)を受ける可能性は,居住地域の特性に影響を受ける可能性がある.
米国の 29 施設から,2005 年 10 月 1 日~2009 年 12 月 31 日に「生存率を高めるための心停止登録(Cardiac Arrest Registry to Enhance Survival)」に前向きに提出されたサーベイランスデータを分析した.人口調査標準地域のデータから,各心停止が発生した居住地域を同定した.居住地域を,世帯所得の中央値である 40,000 ドルを基準に高所得・低所得に分類し,人口調査標準地域の 80%以上を白人または黒人が占めている場合はそのいずれかに分類した.とくに割合の多い人種がない居住地域は「統合」として分類した.居住地域の所得中央値および人種構成と,居合わせた人による CPR の実施との関連を分析した.
心停止した 14,225 例のうち,居合わせた人による CPR を受けたのは 4,068 例(28.6%)であった.居合わせた人による CPR を受ける確率は,高所得の白人居住地域で心停止した患者と比較して,低所得の黒人居住地域の患者のほうが低かった(オッズ比 0.49,95%信頼区間 [CI] 0.41~0.58).低所得の白人居住地域(オッズ比 0.65,95% CI 0.51~0.82),低所得の統合地域(オッズ比 0.62,95% CI 0.56~0.70),高所得の黒人居住地域(オッズ比 0.77,95% CI 0.68~0.86)で心停止した患者についても同様であった.高所得の統合地域で居合わせた人による CPR を受けるオッズ比(1.03,95% CI 0.64~1.65)は,高所得の白人居住地域と同程度であった.
大規模なコホート研究において,低所得の黒人居住地域で院外心停止した患者が居合わせた人による CPR を受ける確率は,高所得の白人居住地域の患者よりも低いことが明らかになった.(米国疾病対策予防センターほかから研究助成を受けた.)