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December 20, 2012 Vol. 367 No. 25

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常染色体優性多発性嚢胞腎患者に対するトルバプタン
Tolvaptan in Patients with Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease

V.E. Torres and Others

背景

常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の経過には,多くの場合疼痛,高血圧,腎不全を伴う.非臨床研究では,バソプレシン V2 受容体拮抗薬が嚢胞の増大を抑制し,腎機能の低下を遅延させることが示されている.

方 法

3 年間の第 3 相多施設共同二重盲検プラセボ対照試験において,総腎容積 750 mL 以上で,推定クレアチニンクリアランス 60 mL/分以上の ADPKD を有する 18~50 歳の患者 1,445 例を,V2 受容体拮抗薬トルバプタンを各患者の最大耐用量で 1 日 2 回,3 回投与する群と,プラセボを投与する群に 2:1 の割合で無作為に割り付けた.主要エンドポイントは総腎容積の年間変化率とした.一連の副次的エンドポイントは,臨床的進行(腎機能,腎臓痛,高血圧,アルブミン尿の悪化と定義)までの期間,腎機能低下率などの複合とした.

結 果

3 年間で,総腎容積の増加は,トルバプタン群では年間 2.8%(95%信頼区間 [CI] 2.5~3.1)であったのに対し,プラセボ群では年間 5.5%(95% CI 5.1~6.0,P<0.001)であった.複合エンドポイントは,トルバプタンのほうがプラセボよりも優れており(追跡 100 人年あたり 44 件 対 50 件,P=0.01),腎機能の悪化率(追跡 100 人年あたり 2 件 対 5 件,P<0.001)と,腎臓痛の悪化率(追跡 100 人年あたり 5 件 対 7 件,P=0.007)が低かった.トルバプタンは,腎機能低下の遅延(血清クレアチニン値の逆数で年間 -2.61 [mg/mL]-1 対 -3.81 [mg/mL]-1,P<0.001)と関連していた.ADPKD に関連する有害事象はトルバプタン群のほうが少なかったが,水利尿(電解質を含まない水の排泄)に関連するイベントと ADPKD に関連しない肝臓の有害事象は多く,中止率がより高いこと(23% 対 プラセボ群 14%)に寄与した.

結 論

ADPKD の患者において,トルバプタンは,プラセボと比較して 3 年にわたり総腎容積の増加と腎機能の低下を遅延させたが,有害事象による,より高い中止率と関連していた.(Otsuka Pharmaceuticals 社,Otsuka Pharmaceutical Development and Commercialization 社から研究助成を受けた.TEMPO 3:4 ClinicalTrials.gov 番号:NCT00428948)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2012; 367 : 2407 - 18. )