April 18, 2013 Vol. 368 No. 16
重症疾患におけるコルチゾール代謝の低下
Reduced Cortisol Metabolism during Critical Illness
E. Boonen and Others
重症疾患は高コルチゾール血症を伴う場合が多いが,これはストレスによる視床下部-下垂体-副腎系の活性化に起因することが示されている.しかしその一方で,重症患者におけるコルチコトロピン低値も報告されており,これはコルチゾール代謝の低下に起因している可能性がある.
集中治療室の患者 158 例とマッチさせた対照 64 例を対象に,主要なコルチゾール代謝酵素の評価を目的として,コルチゾール代謝に関する以下の 5 項目を調査した:毎日のコルチコトロピン値とコルチゾール値;トレーサーとして重水素標識ステロイドホルモンを注入時の血漿コルチゾールのクリアランス・代謝・産生;ヒドロコルチゾン 100 mg の血漿クリアランス;尿中コルチゾール代謝物の値;肝臓と脂肪組織におけるメッセンジャー RNA と蛋白の値.
患者の血中の総コルチゾール値と遊離コルチゾール値は,対照よりも一貫して高かったが,コルチコトロピン値は低かった(両比較について P<0.001).コルチゾール産生は患者のほうが 83%高かった(P=0.02).患者のコルチゾールクリアランスは,トレーサー注入時とヒドロコルチゾン 100 mg の投与後に,50%超低下した(両比較について P≦0.03).これらの因子すべてが,患者の血漿コルチゾール値が対照より 3.5 倍高いことに寄与していた(P<0.001).コルチゾールクリアランスの障害は,コルチコトロピン刺激に対するコルチゾールの反応がより低いことにも相関した.コルチゾール代謝の低下は,肝臓と腎臓におけるコルチゾール不活性化の低下に関連することが,尿中ステロイドの比,トレーサーの動態,肝生検検体の評価によって示唆された(すべての比較について P≦0.004).
重症疾患時には,コルチゾール代謝酵素の発現と活性の抑制に関連してコルチゾール分解が低下し,それが高コルチゾール血症,ひいてはコルチコトロピンの抑制に寄与していた.重症患者におけるその診断・治療上の意義は明らかではない.(ベルギー国立科学研究基金ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00512122,NCT00115479;Current Controlled Trials 番号:ISRCTN49433936,ISRCTN49306926,ISRCTN08083905)