The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

February 14, 2013 Vol. 368 No. 7

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

進行甲状腺癌におけるセルメチニブによる放射性ヨード取込みの促進
Selumetinib-Enhanced Radioiodine Uptake in Advanced Thyroid Cancer

A.L. Ho and Others

背景

放射性ヨード(ヨード 131)に不応の転移性甲状腺癌は,予後不良に関連している.甲状腺癌のマウスモデルでは,選択的マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路の遮断薬によって,ナトリウム・ヨウ素共輸送体の発現とヨードの取込みが増加する.これらの薬剤のヒトにおける効果は明らかになっていない.

方 法

転移性甲状腺癌患者の放射性ヨード抵抗性が,MAPK キナーゼ(MEK)1,MEK2 の阻害薬であるセルメチニブ(selumetinib)(AZD6244,ARRY-142886)によって改善されるかどうかを検討する目的で試験を行った.甲状腺刺激ホルモンαによる刺激後,ヨード 124 陽電子放射断層撮影法(PET)によって,セルメチニブ投与前と投与(75 mg 1 日 2 回)後 4 週間での線量を測定した.2 回目のヨード 124-PET 検査で,2,000 cGy 以上のヨード 131 が 1 つまたは複数の転移性病変に送達可能であることが示された場合に,セルメチニブ投与と同時に治療用放射性ヨードを投与した.

結 果

試験のためにスクリーニングされた 24 例のうち,20 例を評価しえた.年齢中央値は 61 歳(44~77 歳)で,11 例が男性であった.9 例が BRAF 変異陽性腫瘍,5 例が NRAS 変異陽性腫瘍を有していた.セルメチニブによって,20 例中 12 例でヨード 124 の取込みが増加した(BRAF 変異陽性患者 9 例中 4 例,NRAS 変異陽性患者 5 例中 5 例).これら 12 例中,NRAS 変異陽性患者全 5 例を含む 8 例の線量が,放射性ヨード治療の閾値に到達した.放射性ヨードの投与を受けた 8 例中,5 例で部分奏効が確認され,3 例で病勢安定が得られた.全例で血清サイログロブリン値が低下した(低下の平均 89%).研究者がセルメチニブに起因すると判断した,グレード 3 以上の毒性作用は認められなかった.1 例が放射性ヨード治療から 51 週以上経過後に骨髄異形成症候群と診断され,急性白血病に進展した.

結 論

放射性ヨードに不応の甲状腺癌を有する患者サブグループにおいて,セルメチニブは,ヨードの取込みと集積を臨床的に有意義に増加させる.その有効性は,RAS 変異腫瘍を有する患者でより大きい可能性がある.(米国甲状腺学会ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00970359)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2013; 368 : 623 - 32. )