September 26, 2013 Vol. 369 No. 13
補体結合性抗 HLA 抗体と移植腎生着
Complement-Binding Anti-HLA Antibodies and Kidney-Allograft Survival
A. Loupy and Others
抗 HLA 抗体は移植の成功を妨げ,補体カスケードの活性化は抗体関連型拒絶反応に関与する.われわれは,抗 HLA 抗体の補体結合能が移植腎不全に関与するかどうかを検討した.
人口ベースの研究において,2005 年 1 月 1 日~2011 年 1 月 1 日にパリの 2 つの移植施設で腎同種移植を受けた患者を登録した.患者の血中のドナー特異的抗 HLA 抗体の有無と,それらの補体結合能を調査し,移植腎障害の表現型と,移植腎廃絶までの期間を評価した.
1,016 例を主要解析の対象とした.5 年移植腎生着率は,移植後に補体結合性のドナー特異的抗 HLA 抗体が検出された患者(54%)において,非補体結合性のドナー特異的抗 HLA 抗体が検出された患者(93%)およびドナー特異的抗 HLA 抗体が検出されなかった患者(94%)よりも低かった(両比較について P<0.001).臨床的因子,機能的因子,組織学的因子,免疫学的因子について補正すると,移植後の補体結合性ドナー特異的抗 HLA 抗体の存在は,移植腎廃絶の 4 倍を超えるリスクに関連した(ハザード比 4.78,95%信頼区間 [CI] 2.69~8.49).これらの抗体は,抗体関連型拒絶反応の発生率上昇,より広範な微小血管の炎症を伴うより重度の移植腎障害表現型,移植腎毛細血管内の補体成分 C4d の沈着増加にも関連した.従来のリスクモデルに補体結合性ドナー特異的抗 HLA 抗体を加えると,生着不全のリスクがある患者の層別化が向上した(連続的な正味の再分類改善度 0.75,95% CI 0.54~0.97).
ドナー特異的抗 HLA 抗体の補体結合能の評価は,移植腎廃絶のリスクが高い患者の同定に有用であると考えられる.