October 24, 2013 Vol. 369 No. 17
ST 上昇型心筋梗塞時の血栓吸引
Thrombus Aspiration during ST-Segment Elevation Myocardial Infarction
O. Fröbert and Others
ST 上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において,初回経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の前に冠動脈内血栓吸引をルーチンに行うことの臨床的効果は明らかにされていない.この試験の目的は,血栓吸引により死亡率が低下するかどうかを評価することであった.
多施設共同前向き無作為化対照非盲検臨床試験を行った.全国規模かつ包括的なスウェーデン冠動脈造影・形成登録(SCAAR)から患者を組み入れ,全国登録を用いてエンドポイントを評価した.PCI が予定された STEMI 患者 7,244 例を,用手的血栓吸引後に PCI を行う群と,PCI のみを行う群に無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,30 日の時点での全死因死亡率とした.
追跡不能となった患者はいなかった.全死因死亡率は,血栓吸引群で 2.8%(3,621 例中 103 例)であったのに対し,PCI 単独群では 3.0%(3,623 例中 110 例)であった(ハザード比 0.94,95%信頼区間 [CI] 0.72~1.22,P=0.63).30 日の時点での心筋梗塞の再発による入院の発生率は,血栓吸引群で 0.5%,PCI 単独群で 0.9%であり(ハザード比 0.61,95% CI 0.34~1.07,P=0.09),ステント血栓症の発生率はそれぞれ 0.2%と 0.5%であった(ハザード比 0.47,95% CI 0.20~1.02,P=0.06).退院時の脳卒中または神経合併症の発生率に,群間で有意差は認められなかった(P=0.87).結果は,PCI 前の血栓負荷や冠血流で定義したサブグループを含む,事前に規定した主要なサブグループすべてにおいて一貫していた.
STEMI 患者において,PCI 前に血栓吸引をルーチンに行っても,PCI 単独と比較して 30 日死亡率は低下しなかった.(スウェーデン研究評議会ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT01093404)