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July 18, 2013 Vol. 369 No. 3

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家族性および孤発性多系統萎縮症における COQ2 遺伝子の変異
Mutations in COQ2 in Familial and Sporadic Multiple-System Atrophy

The Multiple-System Atrophy Research Collaboration

背景

多系統萎縮症は,自律神経障害に加えて,パーキンソニズム,小脳性運動失調症,錐体路障害などのさまざまな症状を伴う難治性の神経変性疾患である.多系統萎縮症は非遺伝性疾患であると広く考えられているが,われわれは,これまでに本疾患の複数の多発家系を見出してきており,このことは,本疾患の発症に,遺伝的因子の関与を示唆するものである.

方 法

剖検により診断が確定されている多系統萎縮症の多発家系 1 家系について,連鎖解析による遺伝子座の絞り込みと,発症者 1 名の全ゲノム配列解析を行った.また,別の多発家系 5 家系の発症者,日本からの患者・対照検体(患者 363 例,対照 2 組 [520 例,2,383 例]),ヨーロッパからの患者・対照検体(患者 223 例,対照 315 例),北米からの患者・対照検体(患者 172 例,対照 294 例)を用いて,変異解析を行った.これらの解析から見出された変異体について,酵母を用いた相補解析,およびパラヒドロキシ安息香酸-ポリプレニルトランスフェラーゼの酵素活性の測定を行った.この酵素は COQ2 遺伝子によりコードされ,コエンザイム Q10 の生合成に必須である.リンパ芽球様細胞と脳組織中のコエンザイム Q10 濃度を,高速液体クロマトグラフィーにより測定した.

結 果

多発家系 2 家系において,COQ2 遺伝子に,ホモ接合変異(M128V-V393A/M128V-V393A)と複合ヘテロ接合変異(R387X/V393A)を同定した.さらに,COQ2 遺伝子に見出された変異について,COQ2 酵素活性の低下をもたらす,頻度の高い変異(V393A)と,まれな変異が,孤発性の多系統萎縮症の発症に関連していた.V393A の変異は日本人集団でのみ観察された.

結 論

機能障害をもたらす COQ2 遺伝子の変異は,家族性および孤発性多系統萎縮症発症のリスク上昇に関連しており,この疾患の発症機序に COQ2 酵素活性の低下が関与することを示すものである.(日本学術振興会ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2013; 369 : 233 - 44. )