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December 26, 2013 Vol. 369 No. 26

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IKBKB 変異に起因する自然免疫・獲得免疫不全症
Deficiency of Innate and Acquired Immunity Caused by an IKBKB Mutation

U. Pannicke and Others

背景

重症複合免疫不全症(SCID)は,液性免疫や細胞性免疫の不均一な遺伝性の障害から成る.SCID 患者の多くではリンパ球の活性化が障害されているが,その特性はまだ明らかにされていない.

方 法

北部クリー族の 4 家系の患者 4 例を対象とする遺伝学的研究を行った.患者は,B 細胞数,T 細胞数が正常にもかかわらず,ウイルス,細菌,真菌による重症感染症を早期に発症するといった SCID の臨床的特徴を示していた.候補領域を同定するためゲノムワイドホモ接合性マッピングを行った.候補領域は 8 番染色体上に認められ,この区間内の全遺伝子の配列決定を行った.免疫細胞集団,活性化に関わるシグナル伝達,エフェクター機能についても検証を行った.

結 果

患者は低ガンマグロブリン血症または無ガンマグロブリン血症を呈し,末梢血 B 細胞,T 細胞は大部分がナイーブ表現型であった.制御性 T 細胞と γδT 細胞が欠損していた.全例が IκB キナーゼ 2(IKK2,IKKβ としても知られている)をコードする IKBKB のエクソン 13 にホモ接合性の重複,すなわち c.1292dupG を有していた.この重複によって,IKK–核内因子 κB(NF-κB)経路の構成因子である IKK2 の発現が消失していた.患者の免疫細胞は,T 細胞受容体,B 細胞受容体,Toll 様受容体,炎症性サイトカイン受容体,およびマイトジェンを介する刺激に対する応答が低下していた.

結 論

ヒト SCID の一形態として,IKK2 の機能喪失にもかかわらず正常にリンパ球が分化するという特性が示された.IKK2 の欠損は,さまざまな免疫細胞における活性化刺激に対する応答を低下させ,獲得免疫,自然免疫に臨床的に重要な障害を引き起こした.マウスでは Ikk2 の欠損により胚性致死となるが,今回の観察結果から,ヒトでは IKK2–NF-κB シグナル伝達がより限定的かつ特有の役割を担っていることが示唆された.(ドイツ連邦教育研究省ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2013; 369 : 2504 - 14. )