臍帯大腸炎症候群における塩基配列に基づく Bradyrhizobium enterica の検出
Sequence-Based Discovery of Bradyrhizobium enterica in Cord Colitis Syndrome
A.S. Bhatt and Others
免疫抑制は,感染が原因の可能性があるさまざまな特発性の臨床症候群と関連している.臍帯血造血幹細胞移植の合併症の一つ,臍帯大腸炎症候群の原因は感染であるという仮説が立てられている.
保存されていた臍帯大腸炎患者 2 例の 4 つの保存パラフィン包埋大腸内視鏡生検検体に対し,ショットガン DNA 塩基配列決定を行った.コンピュータによりヒトおよび既知の微生物の塩基配列のサブトラクションを行い,残った塩基配列から細菌のドラフトゲノムを構築した.ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と蛍光 in situ ハイブリダイゼーションを用いて,その細菌が他の患者や健常対照者に存在するかどうかを調査した.
生検検体の DNA 塩基配列決定により,既知の生物と一致しない 250 万以上の塩基配列リードが示された.これらの塩基配列から,コンピュータを用いてブラジリゾビウム属の細菌のゲノムと高い相同性を示す 7.65 Mb のドラフトゲノムを構築した.この新たに発見された細菌は,暫定的に Bradyrhizobium enterica(B. enterica)と名付けられた.PCR により,検討した別の臍帯大腸炎患者 3 例すべての生検検体において B. enterica のヌクレオチド配列が検出されたが,健常対照者,結腸癌患者,移植片対宿主病患者の検体では認められなかった.
臍帯大腸炎患者の組織検体で直接塩基配列決定を行い,新規の細菌のドラフトゲノムを構築した.これらの塩基配列と臍帯大腸炎との関連から,B. enterica はヒトの日和見感染の病原菌である可能性が示唆されている.(米国国立がん研究所ほかから研究助成を受けた.)