不妊男性における X 連鎖 TEX11 変異,減数分裂停止,無精子症
X-Linked TEX11 Mutations, Meiotic Arrest, and Azoospermia in Infertile Men
A.N. Yatsenko and Others
非閉塞性無精子症の不妊男性の大半では,遺伝的基盤が不明である.
無精子症男性 15 例から採取した血液に対し,アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションを行った.さらに,無精子症男性 289 例と対照 384 例から血液と精液を採取し,testis-expressed 11 遺伝子(TEX11)オープンリーディングフレームのサンガー法による直接配列決定を用いて変異スクリーニングを行った.
染色体 Xq13.2 上に,3 個の TEX11 エクソンを含む,99 kb のヘミ接合性欠失が同定された.この欠失は,減数分裂特異的胞子形成ドメイン SPO22 内のアミノ酸が 79 個欠損していることを予測するものであり,無精子症男性 2 例で同一のものが認められた.その後の変異スクリーニングによって,TEX11 に 5 個の新たな変異が示された.内訳はスプライシング変異 3 個,ミスセンス変異 2 個であった.これらの変異は,無精子症男性 289 例のうち 7 例(2.4%)で発生していたが,精子濃度が正常な対照 384 例では認められなかった(P=0.003).注目すべきことに,これらの TEX11 変異は,減数分裂停止による無精子症と診断された無精子症男性 33 例のうち 5 例(15%)で検出された.これらの患者の減数分裂停止は,Tex11 欠損雄マウスの表現型と類似していた.免疫組織化学的解析により,ヒトの正常精巣においては,TEX11 の特異的な細胞質での発現が,後期精母細胞と,円形精子細胞,伸長精子細胞で認められた.対照的に,TEX11 変異を有する無精子症男性の精巣では,減数分裂の停止がみられ,TEX11 発現は認められなかった.
この研究では,ヘミ接合性 TEX11 変異が,不妊男性における減数分裂停止と無精子症に共通する原因であった.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)