ミスマッチ修復欠損腫瘍における PD-1 阻害
PD-1 Blockade in Tumors with Mismatch-Repair Deficiency
D.T. Le and Others
体細胞変異は,免疫原性の高い「非自己」抗原をコードする能力を有している.われわれは,ミスマッチ修復欠損による体細胞変異が多くみられる腫瘍は,免疫チェックポイント阻害に対する感受性が高い可能性があるという仮説を立てた.
抗プログラム細胞死 1(PD-1)免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(pembrolizumab)の臨床活性を評価するため,進行性の転移性癌で,ミスマッチ修復欠損を有する患者と有しない患者計 41 例を対象に第 2 相試験を行った.ミスマッチ修復欠損大腸癌患者,ミスマッチ修復能を有する大腸癌患者,大腸癌以外のミスマッチ修復欠損癌患者に対し,ペムブロリズマブ 10 mg/kg 体重を 14 日ごとに静脈内投与した.主要エンドポイントは,免疫関連客観的奏効率と,20 週の時点での免疫関連無増悪生存率とした.
免疫関連客観的奏効率と免疫関連無増悪生存率は,ミスマッチ修復欠損大腸癌患者ではそれぞれ 40%(10 例中 4 例)と 78%(9 例中 7 例)で,ミスマッチ修復能を有する大腸癌患者ではそれぞれ 0%(18 例中 0 例)と 11%(18 例中 2 例)であった.無増悪生存期間と全生存期間の中央値は,ミスマッチ修復欠損大腸癌コホートでは未到達であったが,ミスマッチ修復能を有する大腸癌コホートではそれぞれ 2.2 ヵ月と 5.0 ヵ月であった(病勢進行または死亡のハザード比 0.10 [P<0.001],死亡のハザード比 0.22 [P=0.05]).大腸癌以外のミスマッチ修復欠損癌患者における奏効率は,ミスマッチ修復欠損大腸癌患者と同程度であった(免疫関連客観的奏効率 71% [7 例中 5 例],免疫関連無増悪生存率 67% [6 例中 4 例]).全エクソーム配列決定を行ったところ,腫瘍あたりの体細胞変異数の平均は,ミスマッチ修復欠損腫瘍では 1,782 個であったのに対し,ミスマッチ修復能を有する腫瘍では 73 個であり(P=0.007),体細胞変異の多さは,無増悪生存期間がより長いことに関連していた(P=0.02).
この研究により,ミスマッチ修復欠損の有無でペムブロリズマブによる免疫チェックポイント阻害の臨床的利益が予測できることが示された.(ジョンズ・ホプキンス大学ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01876511)