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October 29, 2015 Vol. 373 No. 18

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転移性前立腺癌における DNA 修復異常とオラパリブ
DNA-Repair Defects and Olaparib in Metastatic Prostate Cancer

J. Mateo and Others

背景

前立腺癌は多様性のある疾患であるが,現在の治療は分子学的な層別化に基づくものではない.われわれは,DNA 損傷修復機能に異常を有する転移性去勢抵抗性前立腺癌に,オラパリブ(olaparib)によるポリ(アデノシン二リン酸 [ADP] リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害が有効であるという仮説を立てた.

方 法

転移性去勢抵抗性前立腺癌患者にオラパリブ錠 400 mg を 1 日 2 回投与する第 2 相試験を行った.主要評価項目は奏効率とし,固形癌治療効果判定基準(RECIST)バージョン 1.1 に基づく客観的奏効,または前立腺特異抗原(PSA)値の 50%以上の低下もしくは血中循環腫瘍細胞数の 5 個/7.5 mL 以上から 5 個/7.5 mL 未満への減少と定義した.腫瘍生検を必須とし,その検体を用いて標的を絞った次世代シーケンシング,エクソーム・トランスクリプトーム解析,デジタルポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査を行った.

結 果

50 例を登録した.全例にドセタキセルによる治療歴があり,49 例(98%)にアビラテロンまたはエンザルタミドによる治療歴があり,29 例(58%)にカバジタキセルによる治療歴があった.評価しえた 49 例のうち,16 例(33%,95%信頼区間 20~48)で奏効が認められ,そのうち 12 例では試験薬の投与期間が 6 ヵ月を超えていた.次世代シーケンシングにより,評価しえた 49 例中 16 例(33%)で,BRCA1/2ATM,ファンコニ貧血遺伝子,CHEK2 などの DNA 修復遺伝子に,ホモ接合体欠失または有害変異,あるいはその両方が同定された.オラパリブはこの 16 例中 14 例(88%)で奏効し,BRCA2 欠失を有する 7 例全例(4 例は両アレルの体細胞系列欠失,3 例は生殖細胞系列変異)と,ATM 変異を有する 5 例中 4 例が含まれた.一連のバイオマーカーの特異度は 94%であった.グレード 3 または 4 の有害事象のなかでは,貧血(50 例中 10 例 [20%])と疲労(6 例 [12%])の頻度が高く,オラパリブの先行試験と一致している.

結 論

前立腺癌に対する標準治療が無効となり,DNA 修復遺伝子の異常を有する患者において,PARP 阻害薬オラパリブによる治療は高い奏効率を示した.(英国がん研究所ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01682772,英国がん研究所登録番号 CRUK/11/029)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2015; 373 : 1697 - 708. )