August 27, 2015 Vol. 373 No. 9
肺動脈性肺高血圧症に対するアンブリセンタンとタダラフィルの初期併用
Initial Use of Ambrisentan plus Tadalafil in Pulmonary Arterial Hypertension
N. Galiè and Others
肺動脈性肺高血圧症患者にアンブリセンタンとタダラフィルを最初から併用することが長期転帰にどのような影響を及ぼすか,データは少ない.
イベント主導型二重盲検試験において,肺動脈性肺高血圧症の症状が世界保健機関機能分類 II 度または III 度で,治療歴のない患者を,アンブリセンタン 10 mg+タダラフィル 40 mg による初期併用療法を行う群(併用療法群),アンブリセンタン 10 mg+プラセボの投与を行う群(アンブリセンタン単剤療法群),タダラフィル 40 mg+プラセボの投与を行う群(タダラフィル単剤療法群)に,2:1:1 の割合で無作為に割り付けた.いずれも 1 日 1 回投与した.イベント時間(time-to-event)解析における主要エンドポイントは,臨床的失敗の初回イベントとし,死亡,肺動脈性肺高血圧症の悪化による入院,病勢進行,不十分な長期的臨床反応の 4 項目のいずれかの初回発生と定義した.
500 例を主要解析の対象とした.内訳は併用療法群 253 例,アンブリセンタン単剤療法群 126 例,タダラフィル単剤療法群 121 例であった.主要エンドポイントイベントはそれぞれ 18%,34%,28%で発生し,単剤療法統合群(2 つの単剤療法群を統合)では 31%で発生した.併用療法群の単剤療法統合群に対する主要エンドポイントのハザード比は 0.50(95%信頼区間 [CI] 0.35~0.72,P<0.001)であった .24 週の時点で,併用療法群では,単剤療法統合群と比較して,脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体 N 端フラグメント(NT-proBNP)値がベースラインから大きく低下し(平均変化量 -67.2% 対 -50.4%,P<0.001),十分な臨床反応が得られた患者の割合が高く(39% 対 29%,オッズ比 1.56 [95% CI 1.05~2.32],P=0.03),また 6 分間歩行距離が延長した(ベースラインからの平均変化量 48.98 m 対 23.80 m,P<0.001).併用療法群において,いずれかの単剤療法群と比較して発現頻度が高かった有害事象は末梢性浮腫,頭痛,鼻閉,貧血などであった.
治療歴のない肺動脈性肺高血圧症患者では,アンブリセンタンとタダラフィルを最初から併用すると,アンブリセンタンまたはタダラフィルの単剤療法と比較して,臨床的失敗のイベントのリスクが有意に低かった.(Gilead Sciences 社,GlaxoSmithKline 社から研究助成を受けた.AMBITION 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01178073)